曲紹介 (SoundCloud)

Taquwami - "Cinderella"

2014/09/09

SeihoのSoundCloudに続いて、TaquwamiのSoundCloudも久々に覗いてみたが、曲が増えている。全体的にクラブミュージック寄りの曲が増えている印象を受けるが、相変わらず持ち前のポップネスは健在だ。それは特に今日アップロードされたばかりのCinderellaに表われている。相変わらず派手で、未来的で、刺激的でありながら、どこかオタッキーである。この在り様はオーストラリアのクラブミュージック系ミュージシャンのDorian Conceptを想起させる所がある。尚、現在こちらの曲は、彼の同曲のSoundCloudページから無料でダウンロードが可能だ。

Seiho - "Plastic", "3D printer"

2014/09/05

大阪のビートメーカーであり、Day Tripper Recordsの主催者でもあるSeihoSoundCloudを久々に聴いてみると、彼の近頃の音源は、全体的に音にすごく電圧のようなものがかかっていて、音に更に力強さが出てきている印象がある。その昔ZEZEN BOYS向井秀徳が本人のブログで、同バンドのドラマー松下敦のドラミングに関して、ずっと彼と一緒にプレーしていると、その威力あるドラミングによって脳天を叩かれた気分になり、頭がクラクラしてくる、という様な事を言っていた覚えがあるが、そうしたビートのクラブミュージックヴァージョンがSeihoの最近のビートになるのかもしれない。Plasticはその好例になるだろう。これを聴いていると、何かこう、ビートで、音で、 圧殺されているような気分になる。

また、ABSTRACTSEXの楽曲群と比べると、更に実験性が強くなっていて、刺激的になっている印象がある。タイムラインを追っている限り、3D printerあたりがそのターニングポイントなっているのかもしれない。細かくぶつ切りにされたビートを基調として展開されるこのビートミュージックは、3D printerと名づけるに相応しい、テクノロジカルで、未来的で、革新的な響きのする曲となっている。

またあれからPitchforkにも紹介されたり、海外へツアーにも行ったようで、世界的な知名度も上がっている。Seihoはその勢いを更に増しているようだ。

Jesse Ruins - "Dream Analysis"

2014/08/27

LLLLのFacebookをふと見ていたら、良く見る名前がその動画と共に飛び込んできた。Jesse Ruins、僕はこのアーティストを海外のアーティストであるとずっと思い込んでいたのだが、どうやら東京のバンドであるらしい。だってさ、以前彼らの公式MVをYouTubeで見たら登場人物が皆白人だったんだもの。そりゃ勘違いするでしょ?まあ言い訳は置いといて、メンバーはNobuyuki Sakuma (Programming/Synths)、 Nah (Vocal/Synths)の二人。ここに紹介した曲は全て"Dream Analysis"というEPに収録されている。他にも彼らのBandCampからは3枚の音源がリリースされている。

彼らの音楽、チルウェーブ的ではあるのだが、他とは何かが違う。シューゲーザー、ポストパンク、80~90年代のイギリスのマンチェスターのバンド的な要素が入っているのもあるだろうが、何より大きいと思うのは大体のチルウェーブは夏に合いそうな爽快さ、或いは夏の避暑地的な涼しさが前面に出ているのに対し、彼らのチルウェーブ的な音楽からは、そうしたものは全く言っていいぐらい感じない。むしろ曇り空が浮かんでくるのである。それがトレインスポッティングのサントラで聴いた様な、古い打ち込みの音と相まって、僕としてはすごくイギリス的なチルウェーブのように感じられるのである。しかしそんな音像の中でも、日本のポピュラーミュージックっぽいキラキラとしたかわいい感じも出ている。イギリス寄りでありながらも、一筋縄では説明が出来ない音楽だ。

DJ owtn. - "GirlFriend."

2014/08/25

僕はこんなサイトをやっているおかげで、最近は邦楽を耳にする機会が多い。そんな自分が最近感じるのは、10代~30代の若い女性の間で、ラップが流行っているのではないかという事だ。それはダボダボの服来て、金ネックレス首にぶらさげて「金、セックス、ディス」みたいなギャング然としたラップではなくて、自分の日常の事、例えば恋愛とか友達とか学校生活の事を徒然と綴ったようなラップだ。年齢が上がっていくと、寂寥感のある都会生活であったり、表面的な世界の裏側のようなものが描かれ始める。今なぜそういうものが流行っているのか、その出所は解らないが、とにかくその類のものはネット上に沢山ある。DJ owtn.もそんな女性ラッパーの一人かもしれない。

最も彼女はラッパーを名乗っていない。その代わり「ポエムコアアイドル」を名乗っている。近未来的とも言えそうなトラックの上で、秋葉アイドル的な萌え系の声でダウナーに何かを呟いている。この曲のラップの内容は感覚的な内容のものが多くを占めるが、その内容は意味がありげで意味が無さそうだ。また、間違いなく論理的思考で彼女の言っている事を解釈しようとすると混乱する。例えば「生きてることの42%は8時42分だから」「好きな人の話をしましょう。好きな人は......いません。だから、土を掘るのです」などという部分は、論理的思考モードの僕には意味が通じない。「は?」とか「なんで?」とかってなる。多分このラップはそういう思考モードで聴くのはナンセンスなものだろう。ただただ音楽と共に彼女の垂れ流される思念に浸るようにして聴くのが良いのだろう。(これに限らず音楽の歌詞って大体そんなものかもしれないが)ただ、そんな意味が解らない中でも、微妙に共感出来るフレーズがあったりで、ちょっとした快感を覚える。

彼女のSoundCloudを夜にずーっと聴き流していると、映画ロスト・イン・トランスレーションを観ている時の様な寂寥感に浸れて、心地良い。思い起こすアーティストとしてはSmanyCOET COCOEHが挙げられる。尚、この曲"GirlFriend."はBandCampでリリースされているEP、"GirlFriend EP"に収録されている。

fabric 70 - "Our Space", "If I Ever Feel Better"

2014/08/20

音楽が特定のジャンルにドップリ嵌っている事についての否定的な発言というのはちらほら聞くけれども、自分の持論は例えある音楽が特定のジャンルにドップリ嵌っていようが、良いものは良い、である。fabric 70もそんな音楽を作っているアーティストの一人に数えられるかもしれない。

fabric 70の公式サイトによると、fabric 70はYasitaka KanesawaとKen Itoによって2013年の11月によって結成されたエレクトロニカ・インディーポップ・ダンスグループであるらしい。一曲目の"Our Space"は"Design Imperfection"というデジタルシングルに入っており、二曲目の"If I Ever Feel Better"は単体でリリースされている。音楽的にはチルウェーブ+エレクトロニカポップに傾倒した後のスーパーカーとの類似性が感じられる。シンセの音の洪水の中、ピッチシフトされた女性ヴォーカルらしきヴォーカルが、気持ち良さそうに歌う。そのシンプルに磨き上げられたチルで洗練された音像からは、アートワークにあるような晴れた空と綺麗な少女が思い浮かぶ。

Minuano - "夏の幻影"

2014/08/18

最後に線香花火をやったのはいつだろうか?覚えていない。気付いたら一緒に花火をする様な友人もいなくなってたし、そもそも花火をやろうという発想が思い浮かんでなかった。僕は線香花火を恋人以外の他者と一緒にするのはあまりが気が向かない。線香花火をすると妙にノスタルジックでしんみりした気分になり、その感情を自分の私的領域外の人間と共有するのが気恥ずかしいからだ。

さて、この曲「夏の幻影」は、まるで線香花火の如く、儚く、短く編集されているが、線香花火並かそれ以上に綺麗だ。Rhodes Pianoの伴奏に乗せて、絹のような質感を持つ甘酸っぱくて心地良い女性ヴォーカルが入る。そこに音空間を華やかにするコーラスとや鈴の音が入り、ムードをロマンティックにするストリングス、フルート、ベースが入る。全体としては(ショート・ヴァージョンではあるが)、恋人との線香花火の情景が思い浮かぶ、甘酸っぱくて、綺麗で。ロマンティックな曲になっている。

このMinuanoというアーティスト、調べてみるとパーカッショニスト兼作曲家であるTakero Ogataのプロジェクトに、あの甘酸っぱいシティポップを作りだすLampのKaori Sakakibaraをリード・シンガーに迎えたユニットらしい。なるほど、道理で聴き覚えのある女性ヴォーカルだと思った。この曲、「夏の幻影」はiTunesで、「蜃気楼 - EP version -」、「ある春の恋人 - EP mix -」と共にシングルリリースされている。

Left Right Arms - "Casement"

2014/08/13

僕はレーベル掘りという行為を、他の音楽オタクと比べてあまりしない方だと思う。だからレーベルに関しては他の音楽オタクより疎い方であると思う。それでもFatCatというレーベルが偉大なレーベルだという事ぐらいは知っている。知っている限りでもSigur Rós, Annimal Collective, Black Dice, Fennesz, Mice Parade, Pan Americanなどなど、数々の優良アーティストのリリースを手掛けている。そんな偉大なレーベルから、日本人が音源をリリースするというのだから、気にならないはずがない。

SoundCloudにあるFatCat Recoredsの同アーティストの紹介文によると、Left Right Armsは若干20歳のベッドルームミュージシャンであるらしい。FatCatは彼が今年5月にBandCampにてリリースしたEP、「Scapes」に三曲加えて、今年9月に改めてリリースするつもりらしい。その深くリバーブがかった音像の中、夢見心地なギターと、まどろむような心地よいヴォーカルが入り、それは聴いている自分をふやけさせていく。音楽的にはドリームポップ、チルウェーブの要素を強く感じさせ、類似するアーティストとしてはHow To Dress Wellが挙げられる。この曲" Casement "はFatCatの同曲のSoundCloudページから無料でダウンロード出来る。

Jan - "RichHotel no Theme"

2014/08/11

夏に合う曲って、ざっくり分けて二つに分けられると思う。涼める曲と、「暑くってもいっかー」って思える曲だ。例えば前者はテクノよりのチルなポストロックSeefeelや、北欧ポップ系のドイツの男女デュオGutherのような音楽が思い浮かび、後者はレゲエや、BrightBlack Morning Lightのようなサイケデリックが思い浮かぶ。さて、このJanのRichHotel no Themeはどちらになるだろうか?多分その両方になるんじゃないかと思う。聴いているだけで、暑くて、ダレてて、何っもしたくない、太陽の下で寝転んで、ビールやソーダを飲んで、ゴロゴロしていたいって感じが出てるけれど、その気持ちの良いドリーミーでトロピカルなギター、しゃがれた声だけれど心地良さと快楽性のあるヴォーカル、リゾナンスの効いたビートには涼める要素も含まれている。

今のところ、彼の素性やリリース状況は解っていない。彼の曲が含まれているレーベルの公式ページがクローズしているし、彼の公式ページもない。だが兎にも角にも、この曲はSoundCloudからmp3フォーマットでダウンロードできる。あと、153秒あたりの「ポォン」というマックでメール受け取った時の音は、わざと入れたのか、偶然入ったのかが割と気になる。

Language - "Nagi", "Free"

2014/08/06

Languageは相変わらず精力的に音楽活動を続けているようで、彼らのSoundCloudを見ると、以前彼らを紹介した時よりも随分曲が増えている。特に直近の曲の"Nagi"や"Free"という曲は自分の好みだ。音響の完成度の高い、透明感のある耽美的なポストロックといった趣。尚且つ、これらの曲にはlanguageらしい、開放感のある異国情緒のフィーリングが宿っていて、聴いてると飛行機に乗って海外旅行に行きたくなる。これらの曲が好きな人はManualAzure VistaSlowdiveJuly Skies、異論はあるだろうがBoards of Canadaあたりを聴いてみると幸せになれるかもしれない。

そして少し遡ってみると、"Silencia"という昨今の流行ジャンルであるチルウェーブの要素を強く感じさせるような曲もある。相変わらず彼らの音楽性は幅が広く、現在の流行ジャンルを柔軟に取り入れている様子だ。

今回紹介した"Nagi"、"Free"、"Silencia"は、全てototoyから高音質配信されているシングルに収録されている。

SELA. - "Anniversary (album preview)"

2014/07/30

SELA.は弱冠20歳のカリフォルニア在住のプロデューサー。bandcampにてアルバム、EP、スプリットEP含む21枚の音源を発表していて、スプリットEPはCoyote Clean UpNoah食品まつり aka Foodmanなどと出している。また、クラウドラップ界のティーンエイジ・スター、Kitty(aka Kitty Pryde)のプロデュースも手掛けているようだ。ちなみにクラウドラップというのは、様々な記述とそれに括られている音源を聴く限り、ざっくり言えばよりゆるくて親しみやすいヒップホップの事を指しているのだと思われる。

大変ムーディーで、チルで、アナログ感のあるトラックを作っている。ジャンルの要素としては、ダウンテンポチルアウトを基調とし、そこにジャズ、ヒップホップ、ネオソウル、アンビエントなどの要素が散りばめられている印象。どことなくロマンティシズムとノスタルジアが漂っているのも特徴的だ。聴いているとアメリカの西海岸の夏の風景を思い浮かんでくる。この暑い季節に聴くにはもってこいだ。