曲紹介 (SoundCloud)

may.e - "Betsuzi"

2014/03/09

Tanukineiri Recordsのこの曲の紹介ページによると、 may.eはインタビュアーとしての活動や、Friendy Echoという、 annie the clumsySacoyanなどが出演する ミュージックイベントの主催もしているシンガーソングライターであるようだ。 これまでのリリースには1stアルバムの「Mattiola」、2nd アルバムの「私生活」があり、 いずれもBandcampにてname your price方式でダウンロードが可能である。 この曲"Betsuzi"が入っている1stアルバムの「Mattiola」は、全て自分一人でホームレコーディングして作られたものらしい。 このアルバムがデジタルリリースする前は、ジャケット、歌詞カード、ライナーノーツを全て自分で作り、フィジカル盤を自身の通販ルートから販売していたそうな。 かなり様々な事に手を出し、やり遂げるアクティブな女性であるようだ。

この曲"Betsuzi"はサイケフォークやアシッドフォークの影響をかなり感じさせる作り。 コードを刻むリズムギターと、まどろみのあって銘酎的なメロディを弾くリードギターで織り成されるメロディの中に、 彼女の気だるくて、素朴で、心地の良いボーカルが入る。空間の歪みと郷愁感を感じさせる出来。Linda PerhacsMazzy Star などを想い起こさせる。

北園みなみ - "ざくろ", "Piano+Rhodes=(・×. ) ))"

2014/03/02

北園みなみは1990年の1月12日、金曜日生まれの無職のミュージシャンであるようだ。 その名前やSoundCloudのアーティスト画像からして女性を思い浮かべる人が多いだろうが、 どうも同アーティストに関するWebの様々な記述を見る限り、 彼・・・おっと、同アーティストが女性であるかどうかは怪しいところである。 現在アルバムを制作中であるようで、2014年の夏にリリースするのが目標であるらしい。

二曲目の「Piano+Rhodes=(・×. ) ))」は人を小馬鹿にするような、間の抜けたユーモラスな曲、と思いきや、 このピアノとローズピアノの煌びやかで、テクニカルで、創造性に富んだ演奏が素晴らしく、 何か一瞬どう反応していいのか戸惑うような曲である。他の楽曲もSoundCloudで聴いてみたが、 最近この人は"にゃんにゃん"という猫の擬声語に凝っているらしく、各楽曲の至る所に"にゃんにゃん"というフレーズが出てくる。 高い演奏スキルと幅広い音楽的素養を持ちながら、 ふざけたような曲(例:「コンビーフ讃歌/落ちた食べ物は食べられない」、「にゃんにゃんファンク」、「エビはカニじゃない」)を沢山作っている様は、 漫画「のだめカンタービレ」の主人公ののだめや、モーツァルトなどを彷彿とさせる。

かと言って彼・・・ではなくて同アーティストはふざけた曲ばかりを作っているわけではなく 「普通に良い」と思えるポップス、ファンク、ボサノバ、インストなども沢山作っている。 "ざくろ"はその「普通に良い」と思える楽曲の一例である。 Lampや山本精一を想い起こさせるような、ほんわかとした休日的なシティポップだ。

尚、同アーティストのSoundCloudによると、同アーティストは楽曲をSoundCloudにアップロードしすぎて容量オーバーになり、 SoundCloudのどこかに同アーティストの新しいアカウントを作ったようだ。(何と同アーティストは56もの楽曲をSoundCloudにアップロードしている。) 興味のある人はその新しいアカウントを探してみては?

deltΔs - "xt/qm", "水色の月"

2014/02/27

多分この先、電子音楽は大きく分けて二つの方向に進んでいくだろうと思う。 一つ目は電子音楽が誕生する以前の音楽の要素を多く取り込む方向性だ。 例えば調を活用したメロディがあったり、抑揚があったり、 テンポに有機的な揺れがあったりという音楽だ。こうした要素は主に電子音楽というものに音楽らしさ、 人間っぽさ、生っぽさを吹き込み、コアな音楽ファンを喜ばせることはもとより、 様々な人間が電子音楽にアクセスしやすくするような入口を作るような役割を果たすだろうと思う。

もう一つの方向性は、電子音楽以前の音楽と照らし合わせて、より非音楽的であるとされる方向性だ。 この方向性の音楽ではヒトによるアコースティックな楽器の演奏のみでは困難な、電子音楽ならではの曲の展開、 例えばオーディオファイルを複数に細かく切ることで、ノイズとも取れるような非常に細かいビートを刻んだり、 ピッチシフターやボーカロイドを使用する事により、通常ではありえない音域の広さのボーカルパートを作りだしたり、 楽曲内の特定の音にだけ一時的にエフェクトをかけてアクセントをつけたり、 というような電子音楽ならではの展開をふんだんに取り入れたり、創り出したり、組み合わせたりしていく。 この方向性の電子音楽は、電子音楽で可能な表現技法の数を増やす役割を果たすだろう。

この両輪が同時に回ることで、電子音楽というもの前進していくと私は推測している。 さて、このdeltΔsのxt/qmはどちらの方向性の音楽だろうか? 私にはこの曲が紛れも無く後者の方向性の音楽であるように思われる。 一定のリズムで刻まれる機械的で無機質なキックの音をベースに、天気予報のアナウンスを収録したオーディオファイルが細かく切り刻むことで ビートを作りだしながら曲が展開していく。ステレオの左右には様々な機械的であったり無機質であったりする、ノイズ音、効果音、サンプル音が散りばめられ、 それらがリズムに乗せて鳴らされる。何かこうドラムセット的ではない”ドラムセット”により独特なビートミュージックが生み出されているような印象を受ける。 そして中盤から若干の恐怖感を感じさせる何かが迫りくるようなパッド音によって曲が徐々に盛り上げられ、曲が収束に向かっていく。

類似性を感じさせる音楽としては、池田亮司、そして先日紹介させて頂いたイシヅカケイが挙げられる。 また彼はエレクトロニカなトラックをベースとした歌モノの楽曲も作っていて、こちらもすごく良い出来だ。 実験的な電子音楽を作るアーティストにありがちな、とっつきにくそうなアーディストではなさそうだ。 尚この二曲が収録されているEP「flo▲ting delt△s」はセラミックレコーズのサイトから フリーでダウンロード可能。

ルルルルズ - "All Things Must Pass"

2014/02/25

ルルルルズは東京を中心に活動する5人組のポップスユニットであるようだ。 メンバーはPawPawのボーカルでもあるモミ(Vocal)、ベースにはMiyuMiyuの高木美沙(Bass)、 ヴァイオリニストとして多方面で活躍する許斐美希(Violin)、くろみつときなこにも所属している奥野大樹(Piano)、 ユメオチでも活躍する行達也(Gt/Keyboard)、酒井一眞(Drums)。どうやら様々なバックグラウンドを持ったメンバーの集まりであるようだ。 この"All Things Must Pass"は、彼らの1st EP「点と線」からの一曲。 まだ同曲は2014.04.02に発売予定の1st mini album「色即是空」にもAlbum Versionとして収録される予定。

まどろみのある、お洒落な女性ボーカルもののポップミュージック。 この緩さと男性コーラスの被せ方は、先日紹介したostandellを想起させるものがある。 最後の方まで聴いていると、ふとヨーロッパの街並みが浮かんでくるようなストリングスと郷愁的なピアノが入り、一気に異国情緒な気分になる。 日が沈む頃にセーヌ河沿いのベンチで聴きたい曲。 残念ながら、自分の生活環境の近くには団地に囲まれたしょぼい河しか無いのだけれど。

Sayoko-daisy - "Sweet Secret"

2014/02/23

Sayoko-daisyの公式サイトによると、 彼女は大阪生まれ、奈良育ち、三重在住の"手法はデジタル、心はアナログな「宅録主婦」”であるらしい。 2012年12月に1stミニアルバム"tourist in the room"、2013年8月に2ndミニアルバム"Need them but fear them"をリリース。 2014年には初のフル・アルバム制作を予定しているようだ。

80年代のアイドルポップを現代のシンセポップ風にしたような感じ。 より大勢の人に解るように言えば、人気野球TVアニメの「タッチ」の主題歌のノリのポップスを現代のシンセポップ風にした感じ。 胸キュン系の可愛さがあるのだが、同時にエロさも持っている。どっちかである事の多い現代においては貴重な存在であると言っていいだろう。 多分この二つの要素が合わさると、それは「エッチさ」になる。

Yuta INOUE - "ノスタルジック日帰り旅行"

2014/02/17

彼のSoundCloudにある音源を聴く限り、Yuta INOUEはDowntempo、Chill、Experimentalな方向のトラックを作っている電子音楽方面のミュージシャンであるようだ。 これまでBandcampより4枚のデジタルアルバムをリリースしている。 この曲”ノスタルジック日帰り旅行”は、まだ彼のリリースしたどの音源にも入っていないようだ。

この曲に付けられたこの”ノスタルジック日帰り旅行”という題名がいいと思う。 この曲には電子的でありながらも、そこには郷愁感という名の感情が確かに伴っている。 自分がこう感じる決して題名バイアスのみによるものだけではないはずだ。
疲れてクタクタになって、部屋のソファに沈み込んでいる時にこういう曲が流れると、いい感じに疲れが抜けて行き、ノスタルジーに浸れそう。 聴いていると海に太陽が沈んでいく田舎の景色が想起され、意識が遠くの方に持っていかれる。

Jappers - "Praise The Moon"

2014/02/15

OTOTOYのJappersのインタビューページによると、 JAPPERSは東京日野市の高幡不動を拠点に活動する5人組のバンドであるようだ。 メンバーは、榊原聖也(Vo)、豊永康平(G)、竹川天志郎(G)、上野恒星(B)、武藤英成(Dr)。 この2012年のインタビューの時点ではメンバー全員が20代前半であったようだ。 これまでの彼らのリリースには、2012年にリリースされた彼らの1st EP、『Lately EP』がある。

サイケで、カントリーで、温もりと古さを感じさせるソフトなロックとなっている。 メロディにもいい感じに捻りがあって良い。 あえて彼らの音楽から、想い起すバンドを挙げれば、Klan Aileenになるか。 彼らのソフトな楽曲が、このバンドにおける標準の柔らかさとなっている。 聴いていると60年代~70年代のアメリカやイギリスの田舎の風景が思い浮かんでくるようだ。 ちなみに影響を受けている音楽としては、The La’sやBig Starがあるらしい。

OILA - "Ode to a day"

2014/02/13

OILAの公式サイトによると、OILAは大阪出身のアーティストであるらしい。 大阪芸術大学を中退後、2012年よりOILAとして活動を始め、2013年3月には1st EP「HOBBY」をリリース。 同年10月には暖房メーカーであるAladdinのCMに楽曲を提供しているそうだ。

確かに暖房メーカーが彼の楽曲を欲しがるのも解る気がする。それほどの心地良さと温もりをこの曲から感じる。 この綺麗で、洗練された、まどろむような音像、そしてこの力みの無く、心地良い、どこか物悲しげな歌声はJames Blakeを彷彿させる。 また、こういう類のものとしては、ストリングスやピアノといった生楽器系の音を使っている比率が高いように思う。 アカデミックに音楽を学ばれていた方なのかな、と思わせる出来。

hydrant house purport rife on sleepy - "roll over post rockers , so what new gazers"

2014/02/07

確かにポストロックとニューゲーザーと呼ばわるモノにはいまいちなものが多い。 ポストロックでは既存ロックの器楽編成でギターを非ロック目的、例えばテクスチャや効果音を加えるなどの目的に使っただけで、 さほど革新性の無く、単純な良さという点でもどうも印象が薄いものが多いし、自分の今まで聴いてきたニューゲーザーと呼ばれる音楽のシューゲーザーとの違いは、世代の違いだけだったりする。

二年前にそんなポストロックとニューゲーザーに挑戦状が叩きつけられていた。 hydrant house purport rife on sleepy が"roll over post rockers , so what new gazers"(ポストロッカーをやっつけろ、ニューゲイザーがどうだっていうんだい?)という 刺激的かつ挑発的なタイトルがつけられたアルバムをリリースしていたのである。

このアルバムプレビューを聴く限り、彼らはこのアルバムタイトルを付けるに値する音楽を作っているように思う。 彼らの音楽性はとても独自性と実験性に富んだシューゲーザー&ポストロックといった趣で、 尚且つそれがポップな形で出力されている。 その様は90年代のイギリスの初期のポストロックバンド、Disco Infernoを想起させる。(少なくとも彼らはやっつけられずに済むだろう)

イシズカケイ - "Off Time"

2014/02/05

自らを"日常系電子音楽レーベル"と称するon sunday recordingsのイシズカケイの紹介ページによると、 イシズカケイは埼玉県在住のトラックメーカー、DJ、ウェブクリエーターであるようだ。 2005年から音楽制作とDJを“ソニックデスモンキー”として開始し、2009年には音楽配信サイトにて、"SDM First Release"をリリース。 2011年に電子音楽レーベル、on sunday recordingsを立ち上げて、同レーベルからイシズカケイ名義で、 "片手間ブレイクビーツ""だらだら生活""ロングバケーション"の3枚のEPをリリースをしている。 この曲"Off Time"は彼の2nd EP、"だらだら生活"からの一曲。""

久しぶりに、ここまで既存の型に嵌らない電子音楽を聴いた気がする。 あえて言えば、60年代あたりの電子サイケデリックのテープを切り貼りしながら作ったような音楽を想起させる。 都会的なエレピ、機械的なキックの音がぶつぎりにされることにより、ビートが構築される。 そこに楽園感のあるシンセ、ステレオの両サイドに動く低い男の声、スターウォーズのR2-D2のようロボットが家に遊びに来たような効果音、 全く別の楽園的な雰囲気の曲をサンプリングした音が入ったりすることで、曲が展開される。 かなり「思い付くまま楽しんで作りました」感が出ていて、聴いてるこちらとしても楽しくなってくる。

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