2014年のベストトラック(SoundCloud)

EMERALD FOUR - "ASTRAL TONES FOR MENTAL THERAPY"

2014/12/27

聴いてて思い浮かんでくるのは、未来の田舎風景である。田んぼがあって、風力発電があって、環境に優しい最先端企業があって、みたいな。シンセワークと良い意味で田舎っぽくて素朴な女性ヴォーカルのコラボがそうしたサウンドイメージを生みだしているのだろう。このある種の不安定さと抑揚感の薄い女性ヴォーカルを形容するにあたって相対性理論のやくしまるえつこを持ち出したくもなるのだが、決してやくしまるえつこのフォロワー的ではなく、あくまで彼女のヴォーカルとしてのキャラが立っている。尚、彼らのMVはどれも才気に溢れているので、興味のある人はこちらでご覧あれ。尚、この曲は"Nothing can hurt me"に収録されていて、 Tanukineiriというレーベルのサイトから無料ダウンロード出来る。

may.e - "跳ねたり飛んだり(BEEF REMIX)"

2014/12/27

リミックスとは「複数のトラックに録音された既存の楽曲の音素材を再構成したり様々な加工を加えることによって、その曲の新たなバージョンを製作すること」と、Wikipediaにはある。そしてこのmay.eの「飛んだり跳ねたり(Beef Remix)」もその範疇内ではあるが、ただこれは既存の自分のリミックスのイメージ、例えば既存の楽曲を自分風にアレンジして、ちょっと違うものにする、というリミックスとは全然違う。これはプロデュースとでも表現したくなるようなリミックスの仕方であると思う。原曲はアコギの伴奏のみでmay.eが歌っている、シンプルで素朴で多幸感のある曲なのだが、これがビーフのリミックスによって様々な楽器が入り、ゴージャスになり、荒井由実すら思い起こさせる多幸感のあるポピュラーミュージックとなっている。

誰もが自分で曲を作り、音楽をネット上で交換出来るようになったこの時代において、このリミックスという分野が拡大し、その価値が例えばこのような素晴らしいリミックスによって、どんどん世に認められていく可能性は今後十分に考えられる。

毛玉 - "花粉症"

2014/12/27

毛玉の音楽は頼りない。一般的な男らしさからはかけ離れている。喧嘩を売られればあっさりとやられてしまいそうだし、風が吹けばどこかに飛ばされてしまいそうだ。ただ風に煽られながらも、空中を舞える浮遊感には恵まれたようだ。視点はごくごく日常的だ。近所のもう取り壊される建物の事とか、日陰が見つからない程の日差しの強さにうんざりしてる事とかをぼやいている。世界情勢には疎そうだ。それ系の話を振れば、「ああ、ぼくそういうむつかしいことはわからないんで・・・」とか言いそうだ。でも毛玉は毛玉なりに、色々ありながらも、平凡な日常を漂いながら幸福に生きているようだ。この曲はそんな愛すべき毛玉の魅力が詰まった一曲であると思う。この曲はHEADZからリリースされるニュー・アルバム「新しい生活」に収録されている。

COET COCOEH - IN A FOG - "IN A FOG"

2014/12/27

この音数の少ない、抽象的な音が使われたトラックで、少し寂しげに、しかし心地良さげな高島匡未のヴォーカルを聴いていると、高層ビルが立ち並ぶ新宿あたりの夜の都会風景が浮かんでくる。それもかなり鮮明に。僕は都会風景音楽といったらナンバーガールを思い出すのだけれど、タイプは違えど、映し出す都市風景の鮮明さでは彼らと肩を並べている気がする。この曲の持つ夜の心地良くて寂寥感のある雰囲気は、妙に自分のプライベートな感情に触れてくる。所謂自分とすごく「パイプ」のつながった、親近感を持ってしまうような曲だ。あと音楽を通しての彼女、高島匡未の佇まいはすごくカッコイイと思う。媚びない感じというか、自然体というか、さっぱりしているというか、なんというか。本当にこの佇まいのカッコ良さの言語化が難しい。

Concert - "Party And Cookie"

2014/12/27

90年代の冬のクリスマス商戦のJ-POPを思い起こさせるような出来。甘酸っぱくて捻りのあるメロディにはフックがある。かっちりポピュラーミュージックの枠に嵌っているわけではなく、意外と電子音楽的な要素も散りばめられていたりで、その枠からはみ出ようとするような実験性、創造性も感じる。それと同時になんだかこの曲には勢いとかイケイケ感を感じられて好き。特に21秒あたりにそれを感じる。この曲は2014年にリリースされたミニ・アルバム「HEADACHE AND HEARTBURN」に収録されている。

Pomo - "So Fine"

2014/12/27

これは売れそうだなと思った。あんなにアブストラクトでパッキパキの高揚感のあるトラックの上で、実力派のヴォーカルにネオソウル歌わせたら、それは良いに決まっていると思う。聴いていてVikter Duplaixを想起させるが、この曲含めて彼よりも、フロア向きの楽曲を多く作っている。しかしそれは家で聴いて十分楽しめる内容だ。それにしても近年カナダからは優良のアーティストの情報が絶えない。Gonzales、Tim Hecker、AidanBaker、Readymade、などなど。その要因としては、あの美しい自然が創造性を刺激してくれるから、英語圏の市場規模は大きく売り上げが見込めるので制作にも金をかけられるから、日本のように仕事ばかりしているような人生を送っていないから音楽を作る時間があるから、厚い中間層を作っていく政策を行っているから金銭的にも余裕があるから、などを考えている。

Lamp - "A都市の秋"

2014/12/27

この曲を聴くまで、Lampには夏のイメージを強く持っていたのだけれど、この曲を聴いて、失礼ながら、ああ、サザンオールスターズのように夏専門の人達じゃないんだな、と思った。この曲からは秋~冬にかけての幸福感が良く出ている。寒いけれど、心は温かい、というような感じの。榊原香保里の可愛らしいヴォーカルと、永井祐介の文系男子系のヴォーカルが掛け合いながら恋愛系の歌詞を歌う姿は愛らしい。その歌詞はメジャーレーベルが大衆に媚びに媚びて作ったような所謂「誰かの喜ぶ言葉の羅列」的な恋愛系の歌詞とは違い、大変詩的である。コード進行やメロディも凝っていて、ありとあらゆる箇所にフックがある。特に1分58秒あたりの浮き上がっていくメロディの部分に高揚感を感じる。そしてそこにあのポピュラーミュージックにおける怪物とさえ言えてしまえそうな存在、北園みなみのゴージャスで派手なビックバンド風味の編曲が加わったこの曲のクオリティは素晴らしく高い。この曲は「ゆめ」というアルバムに収録されている。

Sayoko-Daisy - "Sweet Secret"

2014/12/14

まるでタッチ浅倉南が家に誘って来ているような「エッチさ」に一発でやられた。80年代あたりのアイドルポップを現代版にしたような感じ。細かい所に、その頃の音楽に対する敬意や、愛情が感じられる。また本人のTwitterが結構面白い。「機材が良くなくても気合いでどうにかなる、むしろ自分の場合それだけ」(←過去ツイ拾えないのでうろ覚え)、「アルバム完成祝いに自分で自分にプレゼント。オーディオインターフェース無しやってました、今まで」←(!!)などと機材に恵まれない人達にとっては衝撃的なぐらいに励みになるお言葉で満載だ。そんな彼女が曲作りを始めた理由も変わってて、何と憂さ晴らしのために始めたそうな。それでアルバムまで出してしまうのだから、憂さ晴らしも捨てたものじゃない。ちなみにこの曲は彼女の1stアルバム「ノーマル・ポジション」に収録されている。