曲紹介 (SoundCloud)

Yannis Rianta - "Don't Change A Thing"

2015/05/03

Tower Records Onlineによると、Yannis Riantaはカナダのモントリオール出身のベーシスト、シンガーソングライターであるようだ。音楽家系に育ち、幼い頃から楽器、ソング・ライティング、パフォーマンスのレッスンを積んでローカルシーンで活躍をしてきた、とある。

音楽性としてはPomoVikter Duplaixのようなフューチャー・ネオソウルだ。ネオソウルらしく、女性を誘う様な甘さ、セクシーがあり、チルさがあり。キレのある打ち込みのビート、太いエレクトリックベースの上に、抽象的で迫力のあるシンセや、リバーブがかった遠いギター、そしてYannis Rintaのシルキーヴォイスが入る。やっている事はシンプルだが、その一つ一つのクオリティが高く、結果全体としてのクオリティが高い。このシンプルさは複雑からの逃避ではなく、それはありとあらゆる試行錯誤によって、余分なものが削がれ、洗練された結果精製された結晶の様なものを指すのだと思う。

NUUAMM - "深海の人"

2015/05/02

.NUUAMMは京都出身のそのしっとりした歌声と、煌びやかなアコギの演奏が特徴的な、森ガールっぽいシンガーソングライター、青葉市子と、下山という「サイコデリシャス・ハードポア」というサイケロック、ノイズロック、ハードコアが入り乱れたような覚醒的なロックをやっている関西のバンドのフロントマンで、ソロでは静寂のあるしっとりした音楽をやっているマヒトゥ・ザ・ピーポーのユニットである。

CINRA.NETによると、去年の4月から一緒に音を録るようになり、同年12月にはこの曲「深海の人」が含まれるセルフタイトルアルバム「NUUAMM」を出している。最近はツンデレで言えばデレの部分が多く出ている気がするマヒトゥ・ザ・ピーポーだが、そこには下山のような激しいバンドで自分を燃やした後のような静寂と、生々しさがある。それが青葉市子のアコギの弾き語りというシンプルなスタイルと共鳴している。この曲「深海」ではアコギの演奏にマヒトゥ・ザ・ピーポーの吐息や、ゆらゆら帝国の「フランキー・ティアドロップ」のカバーの様な底にいるような語り口調が入り、そこに青葉市子のしっとりした歌声がヒラヒラと舞うように囀っている。そんな音楽からは人の心の海の底のような世界観や、人の実在性といったものが生々しく、綺麗に表現されている。今後の活動に関しては、あまりライブをやる事をイメージしておらず、たまに二人で砂場で遊ぶようにして創作する事をイメージしているそうな。

Riki Hidaka - "Alain the thinker DUB"

2015/04/25

広島出身の日本のオルタナティブロックの新星、Riki Hidakaと、セクシーで心地良いの声でnaomiと共に退廃的な音楽を作っていたJanがタッグを組んで、LPとダウンロードで"Doublehappiness In Lonesome China"をリリースした。詳細情報はこちら二人の音源の制作に携わる広島のアナログレコードショップ兼レーベルのSTEREO RECORDSは、彼らの音源作りのためにクラウドファンディング(crowd funding)というWeb上で資金を調達する仕組みを提供しているBOOSTERを利用し、資金繰りを行っていたようだ。なるほど、このサービス良い音で音源を作りたくても、その資金繰りに困るミュージシャンにとっては強い味方になりそうだ。

そうして出来た音楽はというと、アナログレコードの質感が存分に出た、濃厚なダブ・サイケ・ドローンミュージックとなっている。柔らかみがありながらも太い音を出すベースと、タムを中心としながらビートを生みだすドラムが、その濃厚な音の下地を作り、Riki Hidakaの深くディレイのかけられたまどろむようなギター、シタール、レゲエ風味のチープなオルガン、セクシーな吐息、低い声で何かを語る男の声などが入りつつ、のっしのっしと曲が展開していく。SoundCloudで聴いていても、その音質の良さはよくわかり、それがその濃厚でダビーで実験色のある様と相まって、80年代のUKポストパンクのAdrian Sherwoodを想起させる。

フレネシ - "Lowitz Arc (2005 demo version)"

2015/04/12

自分は去年、フレネシが活動を休止する事すら知らず、多くの人がその活動休止を惜しむツイートを見て、初めて彼女が活動休止した事を知った。音楽に限らず、あらゆるものの活動停止は、往々にして対象の活動中を貴重なものに思わせる。そしてそのフレネシが今から10年前に作っていてデモをSoundCloudにて公開した。この曲がとても愛らしく思えるのは、上記にあげたバイアスのせいだけではないだろう。そのデモからは宝石の原石的な光が、確かに放たれている。

本曲は彼女の「SPRAWL」というシングルの二曲目の「Lowitz Arc」の2005年に作られたデモだ。この頃から、既に彼女の囁き系ヴォーカルは健在だ。まあ8歳でささやき声しか出なくなった、としているので、それは当然か。しかしその後の研究に研究を重ねた結果生まれたフレネシの乙女系ヴォーカルとは違う良さがある。声がさらに若々しく、まるで磨かれる前の宝石を思わせる良さがある。ピアノの伴奏に合わせ、少し毒のある歌詞を早口で、可愛らしく歌い、おまけにその囁き声にはサイケな心地良さが漂っている。リミッター外して、すごく簡単に感想を言うと、ああ、ちくしょー、可愛いな、である。

Gurun Gurun - "Atarashii Hi (Pawn / Hideki Umezawa Remix)", "Kon B (album sampler)"

2015/04/05

今は春なのに、気温は冬になったり、初夏になったりするようだ。おかげで冬の音楽と夏の音楽をこの時期に聴けたりしている。今日は冬の気温だ。そしてそのせいで、毛布の毛布暑さと枚数を間違え、睡眠不足になり、しかも日頃のストレスのリバウンドのせいか、今日は何をやる気も起きず、全てにおいてダルい。こういう時はダウナーな音楽に浸ってかるのがいい。そしてこのGurun Gurunもこんな時に聴くと気持ちのいい音楽の一つになるかもしれない。

最もGurun Gurunはただダウナーなというだけ音楽ではなく、とても実験性に富んでいる音楽をやっていて、BandCampの音源の数々を聴いていると、頭が面白可笑しくなってくる感じがある。感覚としてはJoan of arcの私的名盤"The Gap"(ピッチフォークでは1.9という低採点だったが、個人的には8.0以上は堅い)とか、ツジコノリコ"Solo"を聴いている感覚に近い。彼らはチェコプラハを拠点として活動するTomas Knoflicek、Jara Tarnovski、Ondrej Jezek、Federselの四人組であるようなのだが、彼はかなり日本とのコネクションが強いようだ。その証拠にGurun Gurunのセルフタイトル・アルバムの曲名を観ていると"kodomo"、"yume no mori"、"ano uta"と日本語の曲名が沢山あるし、そもそもこの女性ヴォーカルは日本語詞で歌っている。ではこの女性ヴォーカルは誰なのかというと、日本のエレクトロニカ畑では著名なmoskitooや、sawakoaki tomitaであったりするようだ。一体何故このようなコネクションが出来たのだろうか?flau繋がりだろうか?とにもかくにも日本と結び付きの強いカルテットである事は間違いが無い。

で、このAtarashii hi (Pawn / Hideki Umezawa remix) は文字通り、硬質で実験性の高い電子音楽を作っているPawnが、先日Gurun Gurunが今年5月に発売するKon Bに先駆けてリリースしたEP、"Atarashii hi"のタイトルトラックをリミックスしているものだ。今回、この日本語でツジコノリコ的にダウナーに歌っている女性ヴォーカルはなんとCuushe。原曲も面白可笑しい森の中で沈んでいくような素晴らしい曲なのだが、Pawnのリミックスバージョンもなかなかイカしている。原曲に比べビート感、硬質な電子音楽色が強くなっている。解りやすい形式がある分、こちらの方がポップに聴こえるかもしれない。なんだか面白い不定形なカルテットを東欧に見つけたという印象だ。

Noah - "Take It Down", "Plerumque", "Mood"

2015/04/04

flauのレーベルページにある彼女のプロフィールを見ると、Noahは北海道出身の音楽家であるようだ。子供の頃からピアノに慣れ親しんでおり、2009年より本格的に音楽活動をスタートさせる。2011年にはflau主催のCokiyu "Your Thorn" Remix Contestにおいて、同リミックス作品が優秀作品として選出されている。

この度、彼女のデビューアルバム、'Sivutie'のリリースを2015年の6月に控え、彼女の3rdミックステープ、"MOOD"がflauからリリース。その全ての曲は、SoundCloudから無料でダウンロード可能だ。

その音像からは、シトシトと降る雨の日を想起させ、そんな日に家で聴くに良さそうに思える。ジャズ、R&B、HIPHOP辺りをエッセンスとしていて、チルく、ムーディーで、ジャジーでもある音数少なめのトラックの上で、透き通ったセクシーな女性ヴォーカルや、テキサスの黒人ラッパー、Siddiqがラップしたりする。浸る音楽として、気持ちの良いものを作っている。Cokiyuの音楽に黒い音楽のエッセンスを与えると、こんな感じになるかもしれない。

Metome - "Sweeter Than Sweet", "Feather"

2015/03/29

近頃のMetomeはやたらとっつきにくいビートミュージックを作っている。代表的なのは"Feather"だ。あらゆる音がぶつ切りにされる事によって、ビート感が生み出され、途中にドラムンベースのビートや、和太鼓のリズムが入り、それはフロアで踊ろうとするとつんのめるレベルで変則的なものになっている。フロアの人々は、この曲がかかった時、どのように踊るのだろうか。想像するだけで可笑しい。Sweeter Than Sweetもその系譜にあるものだが、よりアブストラクトでメロディにフックがあり、より聴き易いものとなっている。

一体ビートミュージックはどこに行ってしまうのか?そう思わせるビートミュージックの枠内で破壊と実験の限りを尽くし、かつ、そうしたビートミュージックにフックのあるメロディーを乗せて、聴き易いものにようにしようという意志も感じられる近頃のMetomeである。

Klan Aileen - "We Are Also Flying", "Eliyn My Eyes"

2015/03/28

最近自分が聴いたロックアルバムの中では、一つ突き抜けていたアルバム"Astroride"で注目を集めたKlan Aileenが、今度はNOWEARMANと共にスプリットアルバムをリリースするそうだ。現在のところ4/7(火)の渋谷Milkywayで行われる Klan Aileen x NOWEARMANにて会場限定販売される予定だ。Klan AIleenのTwitterによると、「4/7発売・4/7販売終了」であるらしい。

彼らの奏でる音はローファイになり、耳をつんざくようになり、荒々しさが増した。そしてあの"Astroride"で聴かれたような暴力性、迫りまくるような挑発性、サビで天に召されるような感じは健在で、それは一つのグランジーなロックミュージックとして単純にカッコ良い。この手の音楽に自分が欲しいものを全て持っている様に思わせる。そして、小難しい事はやっていおらず、至ってシンプルだ。その様は、90年代のグランジロックバンド、Nirvanaを彷彿とさせる。

Portmanteau - "Toast to my shadows", "Patterning", "The new man"

2015/03/08

"T"rust ShopによるとPortmanteauは木村達司(dip in the pool)、モーガン・フィッシャー(元モット・ザ・フープ ル etc.)、安田寿之(元 Fantastic Plastic Machine etc.)の3人によるユニットであるようだ。木村達司が、信頼するミュージシャン 2 人に声をかける形でスタートしている。また、彼らの曲を聴く限り、もう一人女性ヴォーカルが参加しているはずだ。彼らが2013年にリリースしたセルフタイトルの1stアルバムを作るにあたっての唯一のコンセプトは、「自分に気持ち良く響く音」であったようで、「アンビエント」という言葉をキーワードに、各々が楽曲を制作、時にはコラボレーションを交えつつ、アルバムを完成させたらしい。

彼らのSoundCloudを聴く限り、全体的にはアンビエントに寄っている電子音楽といった趣だ。実験精神や遊び心に富むと同時に、まどろむような雰囲気を持っている。そしてどことなく、南米の雰囲気も漂わせている。イギリスの電子音楽レーベル、GHOST BOXのテイストに、アルゼンチン音響派のテイストを散りばめるとこんな感じになるかもしれない。たまにラテンや北欧の香りをさせる女性ヴォーカルが入る曲もあり、こちらも実験性、異国情緒と、ポップネスを併せ持った曲となっている。電子実験音楽好きは勿論、LanguageLamb on SundayYMOが好きな人も反応しそうなユニットだ。

owtn. - "天使志願"

2015/02/21

ポエムコアアイドルのowtn.がNew EP、"owtnism." を2015年2月14日、つまりバレンタイン・デーにリリースしたようだ。6曲入りで、しかも無料でダウンロードが出来る。今回のEPにはSLATE/ Glimusyano munenoliSCIBATTLONの3組のトラック・メイカーを迎えているようだ。

owtn.の音楽からは想起させるのは水だ。そしてこの曲、天使志願はその水の中に今までになく深く潜っていってる。yano munenoli が作成したクリックハウス、ポストダブステップ。エレクトロニカを踏襲したような洗練された、潜っていくような気持ちの良いトラックの中で、owtnの叙情的なポエムが囁かれる。この気持ちの良い「水」の音像に浸かりたくて、数回リピートしてしまった。最後の「天使になります」という言葉がなぜか心に響く。それはアイドルとして特定のキャラクターに成る決意と、その覚悟のようなものにも感じられるし、恋人に向けたメッセージの様にも思える。