曲紹介 (SoundCloud)

miu mau - "Spring", "Monochrome"

2014/05/08

miu mauは女性三人組のニューウェーブバンドであるようだ。メンバーは高島匡未(Shynth-bass & Vo / COET COCOEH)、松田美和子(Guitar & Vo / 雅だよ雅)、梶原洋未(Drums & Vo / 百蚊)。女性ばかりのメンバーにしては珍しくディスコポップ、ニューウェーブ、USインディーポップ、ダブ、ヒップホップ、などあらゆる音楽の影響を感じさせ、全体としてとても硬派にまとまっているように思う。自分がこう思うという事は、女性ばかりのメンバーでは、やる音楽に幅広い音楽性を内包出来ず、音楽が硬派になりずらい、と自分が偏見を持っている証拠だ。そしてこのバンドはそんな自分の偏見が偽であること示すサンプルの一つになる。

音楽性はCOET COCOEHと似ている。ドラム、シンセ、ギターなどで構成される、音数が少なく、ダウンテンポ気味のトラックの上で、妙に佇まいのカッコいい女性ボーカルが歌う、といった趣。独特であるなと思ったのはSpringという、ピッチフォークなどで紹介されているようなUSインディーポップの影響を感じさせる曲である。日本人がこういうのを真似しようとすると大抵英詞を選択するのだが、彼女らはここで日本語を選択している。結果USインディーポップ+日本語詞という、今まで聴いた事ありそうで無かった独特な味わいを醸し出すインディーポップになっている。

それにしてもCOET COCOEHといい、miu mauといい、一体この佇まいのカッコ良さはなんなのだろうか。決して音楽的には保守的ではないのだけれど、自分たちのキャラクターにしっくりこない事はやらなそうな態度というか、なんというか。どうしてもその辺が上手く言語化出来ない。

COET COCOEH - "IN A FOG", "Until The Dawn"

2014/05/07

人は様々な評価シーソーで対象となる音楽を評価し、選択するのだと思う。ポップスとしての完成度の高いか否か、音楽として斬新であるか否か、音質が良いか否か、メロディラインにフックがあるか否か、歌声が美しいか否か、などなど。肯定と否定のどちらかに傾く、それぞれ重みの違うシーソーがいくつもあって、それらの重みの総量を測ったときに、針が肯定の方に振れていれば、人はその音楽を「好きだ」と言ったり、「良い」と言ったりするのかもしれない。

自分のリスナー歴において、比較的重みのある評価シーソーはなんだろうか?その一つとして思い当たるのは「聴いていて情景が浮かんでくるか否か」であるように思う。僕は聴いていて情景が浮かんでくるような音楽に弱いのだ。一時期そういう音楽ばかり聴いていた。いくつか例を挙げれば、Number Girl、Tim Hecker、Flying Saucer Attack、Nudge、Ike Yard、Bark Psychosisなどだ。このCOET COCOEHもそんなアーディストの一人になるかもしれない。

COET COCOEHの公式ページによると、同ユニットは高島匡未によるソロプロジェクトであるようだ。彼女のSoundCloudにアップロードされている曲を聴く限りでは、ディスコポップやUSインディーポップ、比較的最近のビートミュージック、ヒップホップなどの影響を感じさせる。

音数の少ないトラックの上で、しっとりとしたエコーをかけて、少し寂しげに歌う彼女の曲からは、常に一定の湿っぽさが漂う。聴いていると都会の夜の寂寥感と同時に、仄かな安堵感も感じられる。自分が夜に一人で都心のビルから都会の風景を眺めている時や、夜、家に帰る電車のドアの手すりによりかかりながら、窓からの風景をぼんやり見ている時の自分のフィーリングに、すごくシンクロする音楽であるように思う。そんな自分の私的なシーンとシンクロするせいなのだろうか、なんだか彼女の音楽に妙に親近感を感じてしまうのである。

The Octopus - "Danae"

2014/05/03

THЁ ΩCTΘPUSは東京で活動する和泉雄彦(Vo, Gt)、阿部正洋(Bs)、折田さやか(Dr, Vo)の3ピースバンドであるようだ。今のところ音源のリリースは確認されていない。

彼らのSoundCloudを聴いていると、シューゲーザー風味の音楽、サイケデリックロック風味の音楽、色々やっているが、僕はこのサイケフォーク風味のDanaeという曲が好きだ。郷愁感があって、何かこう霧の中から昔の記憶がぼんやりと蘇ってくるような曲である。この曲に限っては、女性サイケフォークシンガーであるmay.eを想起させる。

nakayaan - "bsmt_dcf"

2014/04/26

nakayaanはミツメというチルで緩いポストロックをやっているバンドのベーシストである。このトラック"bsmt_dcf"は、恐らく、彼が今年四月にリリースした1stソロ・アルバム"Ease"に収録されている、may.eがヴォーカルとして参加している10曲目の"basement"という曲と、11曲目の"deathcity funk"という曲を繋ぎ合わせたトラックであると思われる。

このトラックの一曲目の初めの方を聴いて、80年代あたりの夜の高速道路に合いそうなポップスのヒット曲を思い出したのだが、その曲名が思い出せず、この曲を見つけた日とその次の日合わせて約1時間ぐらい。自分の脳内とインターネット検索したが、結局名前が出てこなかった。(何か思い当たる曲があったら教えて欲しい。fareasternwindow@gmail.comかTwitterまで)あと、どことなくメロディがイギリスのマンチェスター出身のテクノアーティストのThe Chemical Brothersのヒット曲、Let Forever Beに似ている。音質はあまり良くないのだけれど、それでもこの曲のメロディ、may.eの力みの無く、心地の良さを漂わせるボーカルにはフックがあり、聴いた後に何度も脳内再生されるものがある。願わくばこういう曲をもっとハイファイにした音源を聴いてみたいところだ。

Language - "Slow Sunset", "prayer"

2014/04/22

彼らの公式ページによると、LanguageはKaori (Vocal)、Yosuke Kakegawa (Guitar/Computer)、Naoyuki Horizawa (Bass/Computer)のメンバーで構成されるグループであるようだ。2009年にリリースしたアルバム"Slower Than Summer"を皮切りに、これまでに三枚のアルバムリリースと一枚のリミックスアルバムのリリースがある。

彼らのSoundCloudを聴くと、北欧やロンドンの香りをさせるエレクトロニック・ポップ、ダウンテンポでチルなイージーリスニング、シューゲーザー、ブラジリアンなど、大変様々な方向の音楽をやっている事が解る。"Slow Sunset"は抽象的で音質の良いハウスのトラックの上に、透明感のあるセクシーな女性ボーカルが入る、異国情緒と開放感を感じさせる一曲。二曲目の"prayer"は、ハスキーさのあるセクシーな女性ボーカルを主役として、それを盛り立てる多種多様なシンセが入る、フックのある曲だ。

また、彼らのSoundCloudにはリミックス曲を含め、45ものの音源がアップロードされており、全体的な質は高い。気になった人はチェックしてみては。

OVERROCKET - "TIME BOAT"

2014/04/18

OVERROCKETは先日紹介したShin NishimuraとChizawa Qのテクノユニット、FARBEにも参加していた女性ヴォーカリストの本田みちよ、電気グルーヴFPMなどのエンジニアやMIX、プログラミングなどを手掛けている渡部高士の2人組エレクトロポップ・ユニットである。2000年、7曲入りミニアルバムの"blue drum"でデビューしてから、2012年まで計4枚のアルバムをリリースし、2013年、本田みちよの脱退により、事実上解散している。このトラック”TIME BOAT”は2012年にリリースされた"MUSIC KILLS"に収録されている。尚、ototoyからは、このアルバムのHQD Version(24bit/44.1KHz以上の高音質ヴァージョン)がリリースされている。Webでの試聴の段階から既に「ヤバい」音が出ている。

このビートトラックの音の出方は素晴らしい。太く、電圧のかかってて、キレのある音が出ている。所謂テクノ界隈で良く言われる「本気の音」であるように思う。そんなトラックの上に本田みちよの透明感のある歌声が入るというのだから、たまらない。週末の都会の夜に合いそうなアブストラクト・テクノ・ポップである。

Gi Gi Giraffe - "Tweet Like A Bird", "Naked Girl", "Everything Goes"

2014/04/16

彼のSoundCloudTwitterのプロフィールによると、Gi Gi Giraffeは東京の国立を拠点として活動する、Keiyu Yamamotoによる宅録ソロプロジェクトであるようだ。ただ聴いていると女性ボーカルと男性ボーカルがいるように感じるので、現在もその形態で活動しているのかは疑わしい。もしかしたら男性ボーカルがファルセット気味で女性ボーカルのように歌っているのかもしれない。(以下女性ボーカルとするが、それは女性ボーカルらしきボーカル、という意味合いで受け取って欲しい)全ての楽曲はKeiyu Yamamotoによって書かれたものであるようだ。普段は録音ばかりやっているが、たまにライブもするそうだ。

彼の音楽を簡単に表現すればサイケデリック・ローファイ・ロック&ポップスである。「Tweet Like A Bird」では囁くようにして歌う脱力系の女性ボーカルが大変魅力的。そしてこの銘酎的なギターが気持ち良い。全体としてとても牧歌的である。二曲目の「Naked Girl」は少し汚し系のエフェクトのかけられた、ルードに吐き捨てるような男性ボーカルが中心に来て、それに女性ボーカルのコーラスが被される形。サビではコクのあるノイズを発するギターがブイブイ鳴らされて、聴いていると興奮してくる。「Everything Goes」はサイケでセクシーな女性の囁くようなボーカルの魅力が前面に押し出された楽曲である。とてもチルな一曲である。

なんとなく彼の楽曲を聴いていると、マイクを通して録音するのは、曲に良い感じの空気感を加えるには、かなり有効な手段であるな、ということを改めて感じる。しかしこれ程優良な楽曲を作り続けるアーティストのTwitterアカウントのフォロワーが僅か89というのはちょっと考えられない事であると思う。

フレネシ - "地球空洞説", "レイテンシーガール"

2014/04/09

SoundCloudにプロフィールによると、8歳でささやき声しか出なくなり、 20歳の頃より大学卒業までの二年間に50曲余りを作曲。22歳の頃よりソロ名義を「フレネシ」として、「ささやいていても硬派」な楽曲を多数作曲している、とある。 また、坂本龍一主宰していたミュージックサイト、MUSIC TREEでは、LiveBrain賞、ONKYO賞をはじめ受賞多数。これまでのリリースには2009年のHMVインディーズチャート、カレッジチャートの一位をそれぞれ獲得したアルバムの「キュプラ」、ミニアルバムの「Landmark Theater」、7インチの「aucitron」がある。後者二作品には英詞バージョン、イタリア詞バージョンがあるようだ。

先日紹介させて頂いたSayoko-daisyとの類似性を感じさせる。Sayoko-daisyよりも「可愛い」と「エロさ」の度合いは「可愛い」寄りである。そして彼女と同じく80年代のアイドルポップやシティポップから影響を受けており、尚且つ、カヒミカリィやbiceのような渋谷系のアーティストからも影響を受けていると思われる。ポピュラーミュージックとして構成が良く練られており、フックがある。この「可愛さ」の中には、ポピュラーミュージックの幅広い素養が内包されていように思う。

試みとして面白いのが、”「鼓動の秘密」を歌ってみた”である。これは元々東京女子流というアイドルグループの楽曲である「鼓動の秘密」のボーカルレストラックの上で歌った曲であると思われるが、これは本家を凌駕している出来であると思う。ここまで歌い手によって曲の印象が変わるとは驚きである。素人の女性を集めて、中途半端なアイドルグループを作ってプロデュースするよりも、素質のある歌い手をプロデュースして、クオリティの高いものを作れば、海外でも人気が出るだろうし、人々に末永く聴かれるだろうし、ファンの裾野が広がるだろうし、もっと儲けられるようになるだろうし、何より音楽に携わる者としてより幸福になれる、と思うのだがどうだろう。

Pigeondust - "Madface ft.Midaz The Beast", "With You"

2014/04/05

Pigeondustは日本のビートメーカー、DJ、レーベルオーナーであるようだ。 Idlemomentによると、 90年代からブレイクビーツを組み初め、 2000年代は海外のアングラレーベルにトラック提供を行い、11年にはMC、SadatZerohを迎えた自身のデビュー・アルバム「Eastbound Ticket」をリリース。以降、国内ではHaiiro de Rossiを筆頭とするdaokoなどの新世代ラッパーのプロデュースや、 ICE DYNASTY G.Oのリミックスなどを行っているらしい。

僕はギャング臭のするHIPHOPがあまり好きではないのだけれど、この一曲目の"Madface ft.Midaz The Beast"は、そんな自分の好みの垣根を超えてくるカッコ良さと味わい深さがある。 この切なさと虚無感とユーモアが内包されたアナログ仕立てトラックの上に、正直何を言っているの良く解らないが、何かこう、溜まっているものを気持ち良く発散させるようなラップが乗ってきて、聴いていると興奮してくる。二曲目の"With You"もアナログ感と郷愁感と優しさのある、ムーディーでチルなトラックだ。

FARBE - "Colours"

2014/03/11

ダンスミュージック系の情報サイト、clubberia によると、 Farbeは代官山AIRの人気テクノパーティー「PLUS TOKYO」を主宰しているDJ Shin NishimuraとChizawa Qのユニットであるようだ。 この曲"Colours"の入っている、FARBEの1st アルバム"Colours"には透明感のある歌声が特徴的なシンガーソングライター、Michiyo Hondaが参加している。

この曲"Colours"は、所謂渋谷系のタグを付けられるような女性ボーカルもののテクノポップなのだが、 テクノ系のトップアーティストと比べても孫色の無いぐらい、音の質が高い。 シンセベースの音はブイブイ鳴っていて迫力があるし、上物は目の上ら辺から快楽物質が分泌されるほど、爽やかで気持ちの良い音を出している。 フジロックのような空気の美味いところで行われるフェスのテクノステージの昼のオープニングか、 同フェスのオールナイトのテクノパーディーが終わる朝に浴びたい曲かもしれない。 朝に合い、爽快であり、音が本格派である、という点においてUnderworld のBorn Slippyを想起させる。 またエレクトロニカポップに傾倒した後のスーパーカーにも似ている気がする。

1 2 3 4 5 67 8 9