曲紹介 (SoundCloud)

The Tate - "Untitled 2"

2014/11/15

The Tateは静岡浜松を拠点とする、deepNowという3ピースロックバンドの元メンバーであったSoushi MizunoとKazuno Suzukiによるプロジェクトであるようだ。現時点では音源のリリースは確認されていない。音源は大阪Flake recordsにて、この曲の入った2曲入りの音源を無料配布していたようだが、現在は品切れのようだ。本曲"Untitled 2”はこちらのページからmp3フォーマットでダウンロード出来る。ライブの方は行っているようで、彼らのライブ情報は彼らのTwitterに掲載されている。

ポスト・ダブステップ、ミニマルミュージック、アンビエント方向のポストロックがブレンドしたような音楽である。圧迫感のあるクリック気味の鳴りの良いキック、プチプチとビートを刻んでいくの気持ちの良いクリック気味の拍手音をベースに、まどろむようなギターとパッドで冬の景色に吸い込まれていくような音像が作られる。そしてそんな音の中で、気だるさと温もりのある男性ヴォーカルが歌う。曲展開は同じフレーズを繰り返しながら、音の足し引き、音響処理で違いを作っていくという形だ。ジャンルは少し違うがSouthというポストロックバンドを想起させるような冬の空気感を持っている。日差しが角度がさらに斜めになった、空気のピリリと引き締まる寒さのある今日に聴くには良いかもしれない。

afxafxafxafxafxafx - "Nag Champa Breaks 5"

2014/11/09

AFX、Blue Calx、Bradley Strider、Martin Tresseder、Caustic Window、GAK、Soit P.P、Polygon Window、Power-Pill、Prichard D. Jams、Q-Chastic、The Dice Man、Tahnaiya Russell、DJ Smojphace…

これらが何の名前群だか解るだろうか?これらは全て一人のテクノアーティストの変名プロジェクトである。彼の名はRichard David James。イングランドの最南西に位置する地域、コンウォール出身で、Aphex Twin名義での作品が最もよく知られている。91年からアーティストとしての活動を始め、メインのAphex Twin名義では先日リリースされたばかりの「Syro」を合わせて9枚のアルバム、アシッドテクノに傾倒しているAFX名義では12枚の音源、他にも把握し切れない数の音源をリリースしている。彼は名前を変えて、ネットに自分の音源をアップロードしたり、音源をリリースしたりしては、そのサウンドからして「こいつRichardじゃね?」とリスナーから疑われている。そしてこのafxafxafxafxafxafxも彼の変名プロジェクトではないかと疑われている。AFX直系のアシッドテクノに、Aphex Twinの神経質がIDMが合わさったようなトラックである。

また、彼の他アーティストとののコラボのプロジェクトと疑われているもの(SteinvordThe Tussなど)もあるので、気になった人はチェックしてみるといいだろう。

新川忠 - "星のさざなみ", "カーニバル"

2014/11/02

新川忠のブログによると、彼は東京生まれのシンガーソングライターであるようだ。楽曲制作は自宅にてすべて一人で行っている。趣味はハードな散歩と映画鑑賞、ライブはしないアーティストであるようだ。2003年にこの二曲が収録されている1stアルバム「sweet hereafter」をリリース後、2005年に2ndアルバム「Christy」をリリース。2009年以降はMyspaceにて、プライベートな形で作品を発表。またLamp「ゆめ」や、湯川潮音「うたのかたち」といった他のアーティストの制作にも参加しているようだ。

2011年より3枚目となるニューアルバムの "Paintings of Lights" 制作を開始。同アルバムは2015年1月にリリースされる予定だ。

一曲目の「星のさざなみ」はシルクの質感を思い起こさせる、力の抜けた、心地の良いヴォーカル、そしてまるで聴いていて心に華が開くような多幸感のある編曲が特徴的だ。聴いていると、休日の海岸の静かな波の様子が思い浮かんでくるような、多幸感と静けさを感じさせる一曲である。二曲目の「カーニバル」からは、祭りが終わった後の切なさが感じられる。そして祭りの最中のロマンティシズムを振りかえって、それに浸っているような曲だ。

jan and naomi - "Heso"

2014/11/01

岡村詩野によるjan and naomiのインタビューページによると、jan とnaomiが出会ったのは2011年暮れで、2012年暮れにユニットを組む事を決めたそうな。彼らは別に交際しているわけではなく、互いにパートナーがいるようだ。jan GREAT3のメンバーでもあり、以前このサイトでも紹介した通り、ソロ活動も行っている。もう少し読み進めてみると、janの母親は何と佐藤奈々子らしい。naomiの方は残念ながらあまり情報がない。

世の中はあらゆる畑であらゆる流行りの音楽に溢れているが、その中においてjan and naomiはその外側に在るような印象があり、時代をスッと超えていく事の出来る様な、普遍的な魅力を感じる。男女デュエットの甘美な快楽主義的音楽は、自分の文脈から見れば、janのソロ活動のような快楽主義的音楽に、naomiが甘美さと癒しの要素を与えているような印象を受ける、が、naomiが作曲する事もあるらしく、どちらかがベースになっていると捉えるよりも、ただただ二人がブレンドした結果、こうなっていると捉えた方が良さそうだ。

この曲、"Heso"は、彼らは先月の29日にリリースしたEP、"jan, naomi are"に収録されている。それにも伴いライブも続々と決まっているようで、その詳細はこちらで確認出来る。

may.e - "跳ねたり飛んだり(BEEF REMIX)"

2014/10/25

may.eは日本のサイケデリック・フォーク・シンガーで、彼女のBandcampを見る限り、これまでに七枚の音源を出している。彼女の"Reminder"というミニ・アルバムからの一曲、「飛んだり跳ねたり」が「会社と作曲活動の狭間で揺れ動く、 心と股間は少年のままの兄貴。 NEXTMUSICの残党。」と自らを称するビーフの編曲により、素晴らしいものとなっている。

原曲の飛んだり跳ねたりはシンプルで、素朴で、心地の良いサイケデリック・フォークという趣なのだか、ビーフの巧みな編曲により、音楽がダイナミックに、ゴージャスなものへと変貌している。この曲からは、荒井由実の楽曲を持っているような多幸感が溢れ出ていて、Linda Perhacsの素朴な心地良さが漂っている。日差しが斜めになってきた時期の日中に合いそうな曲だ。

この二人、一時的でもいいから、バンド組んだらいいのに。

Concert - "Party And Cookie"

2014/10/18

Rallye Labelによると、Concertは2006年に鈴木一弘(vo.gt)、本多遊(gt)、渡辺数人(dr)、脇本有希子(b)により結成されたバンドであるらしい。2007年からスライド映写機や映像と演奏を同期させたスタイルのライヴ活動を開始。2008年には宅録レコーディングの自主制作ミニアルバム 「ゼミナール」を発売。その後、ベー スの脇本が脱退し(レコーディングのみコーラスで参加)、3人編成のバンドになる。2009年からライブ活動を休止して、徐々に楽曲制作に力を入れるようになり、2011年1stフルアルバム「Concours」をリリース。2014年には、本曲" Party and Cookie"の収録されている6曲入りのアルバム「Headache and Heartburn」をリリースした。現在は鈴木一弘と本多遊の二人組となっているようだ。

この鐘の音が入ったポップな楽曲を聞くと、90年代の冬のJ-POPの、特にクリスマス商戦を狙った曲を思い出す。転調を駆使した曲構成にはフックがあり、ポップネスに重きを置きながらも、一筋縄では終わらせない捻りがある。中盤ではガラリと展開が変わり、電子音楽的な処理の施されたアブストラクトでムーティーな展開となる。ポップミュージックとしてのクラフトマンシップを感じさせると同時に、その枠からはみ出ようとする意志も感じさせる。

Lamp - "A都市の秋"

2014/09/29

Lampは2000年に結成された染谷太陽、永井祐介、榊原香保里の三人組のバンドである。これまでに7枚のアルバムと一枚の音源集を出している。その音楽性はロマンティシズムと郷愁感の溢れる、甘酸っぱいシティポップといった趣だ。メロディの調の変え方が巧みで、それが曲に良い捻りを生みだし、フックのある曲を大量に生み出す事に成功している。また、常に彼らの音楽からは一定温もりを感じられるのも特徴的だ。

この曲「A都市の秋」は今年2月に発売された「ゆめ」というアルバムに収録されている。また、この曲には今年の10月22日にアルバム"PROMENADE"をリリースする予定の北園みなみが編曲者として参加している。そのせいだろうか、ビッグバンド風味のゴージャズさのある曲に仕上がっている。榊原香保里の温かみのある、愛らしいヴォーカルがリードし、サビになると文系男子系の男性ヴォーカルが歌い、その後はこの男女のヴォーカルがかけあうようにして、秋の恋愛が主題となっている歌詞を歌うこの曲からは、胸キュンものの幸福感と郷愁感が溢れ出ている。何となく、Lampの曲がいつも幸福感が溢れているのは、日々が過ぎゆく事が解っているからなのかもな、なんて事を思った。

cokiyu - "untitled new"

2014/09/26

歌モノの抽象的な電子音楽を中心として制作する女性アーティスト、cokiyuの新曲"untitled new"はクリックハウス風味のトラックの上に、彼女の透明感のあるヴォーカルが入るといった趣だ。彼女の以前の作品と比べると、かなりビートに力を入れているような印象を受ける。クリックハウスのビートはビートと言っても、例えば普通のハウスやHipHopのような太いビートで押していくようものではなく、音の粒やFXでビートを刻んで、それをステレオの左右に散りばめて、その気持ち良さを味わうといった類のものだ。この界隈の音楽としてはJan Jelenikが著名である。この手の音楽をやろうとすると、音楽として無機質になってしまいがちであるのだが、彼女の透明感のあるチルな歌声、吸い込まれていくなメロディ、巧みなアレンジによって、有機的な音楽となっている。

夏に合いそうなチルなトラックだが、聴いていると冬っぽい情景も浮かんでくるので、少し寒くなってからでも十分に合いそうな音楽だ。

Arμ-2 - "Hey Girl"

2014/09/17

Arµ-2は1993年生まれの「ビート・シャーマン」であるそうな。「シャーマン」の定義をはっきりさせるために、調べてみたところ、Wikipediaには「シャーマニズムにおいて、超自然的存在と直接接触・交流・交信する役割を主に担う役職。呪術者・巫・巫女・祈祷師・ムーダンなど」とある。彼のBandCampには12のリリースがあり、また、EN Tokyoというコンピレーションにも参加しているようだ。

彼のSoundCloudにはヒップホップ系のビートを基調とし、その上にメロウでムーディーな「上モノ(うわもの)」が乗る、といった趣の音楽が多数アップロードされている。秋に聴くにはとても良い音楽群だ。"Hey Girl"という曲では、そこにネオソウル風のムーディーなヴォーカルが入る。この曲は同曲のSoundCloudページから無料でダウンロード可能だ。少しタイムラインを遡ってみると、音使いが少し派手な、今風の新しさを感じさせるビートミュージックもあるが、それでも「メロウでムーディー」の範疇内に収まっている。

Orientone - "Nu Wa", "Which Animal?"

2014/09/10

OrientoneのSoundCloudにある中国語の記述をGoogle翻訳して、更にその日本語として成り立っていない訳文を、解読すると、どうやらOrientoneは西のエレクトロニックダンスミュージックと東の伝統音楽を混ぜ合わせた様な趣向の音楽を作る、台湾台北を拠点として活動しているアーティストであるらしい。この"Nu Wa"と"Which Animal?"の二曲はオリジナル曲3曲とリミックス曲3曲から成り立つミニアルバム、"Huang Mei"に収録されているようだ。

聴いていて想い起すアーティストとしては、Trinitrongroup AIke YardTrentemøllerなどが挙げられる。あと、映画"Lost In Tranlation"のストリップシーンあたりで流れていた”酒の街♪”などと歌う曲とすごく雰囲気が似ていると思うのだが、その曲はサントラにも入っておらず、その詳細は全く解らない。音楽性としてはNew WaveNo Waveの影響が強く、そこにところどころオリエンタルな要素が散りばめられているといった印象。一曲目の"Nu Wa"はパワーとキレとスピード感を感じさせるクラブミュージック風のトラックの上で、倦怠的で挑発的な女性ヴォーカルが英語、たまに中国語で歌うといった趣。ライブ受けしそうな、夜遊びしている時の車の中でかけるとアガりそうな曲だ。どちらかというと二曲目の"Which Animal?"の方が実験色は強く、色んな事をして遊んでいる印象を受ける。一曲目に比べて音と音の間に隙間が取られ、カンフーしているときの音、普通の猫の鳴き声、悪魔的な猫の鳴き声、動きのあるシンセのFXが入り、そんなトラックの上でひたすら"1 and 2 and 3 and 4"と繰り返す、気だるくてセクシーな女性ヴォーカルが乗る。最後の中国のパレードに使われていそうなサンプリングで終わる終わり方は、60年代のガレージ・サイケ・バンド、United States of Americaを想い起す。台湾とその周辺のアジア諸国のシーンに興味をそそられる出来である。