曲紹介 (SoundCloud)

COET COCOEH - "IN A FOG", "Until The Dawn"

2014/05/07

人は様々な評価シーソーで対象となる音楽を評価し、選択するのだと思う。ポップスとしての完成度の高いか否か、音楽として斬新であるか否か、音質が良いか否か、メロディラインにフックがあるか否か、歌声が美しいか否か、などなど。肯定と否定のどちらかに傾く、それぞれ重みの違うシーソーがいくつもあって、それらの重みの総量を測ったときに、針が肯定の方に振れていれば、人はその音楽を「好きだ」と言ったり、「良い」と言ったりするのかもしれない。

自分のリスナー歴において、比較的重みのある評価シーソーはなんだろうか?その一つとして思い当たるのは「聴いていて情景が浮かんでくるか否か」であるように思う。僕は聴いていて情景が浮かんでくるような音楽に弱いのだ。一時期そういう音楽ばかり聴いていた。いくつか例を挙げれば、Number Girl、Tim Hecker、Flying Saucer Attack、Nudge、Ike Yard、Bark Psychosisなどだ。このCOET COCOEHもそんなアーディストの一人になるかもしれない。

COET COCOEHの公式ページによると、同ユニットは高島匡未によるソロプロジェクトであるようだ。彼女のSoundCloudにアップロードされている曲を聴く限りでは、ディスコポップやUSインディーポップ、比較的最近のビートミュージック、ヒップホップなどの影響を感じさせる。

音数の少ないトラックの上で、しっとりとしたエコーをかけて、少し寂しげに歌う彼女の曲からは、常に一定の湿っぽさが漂う。聴いていると都会の夜の寂寥感と同時に、仄かな安堵感も感じられる。自分が夜に一人で都心のビルから都会の風景を眺めている時や、夜、家に帰る電車のドアの手すりによりかかりながら、窓からの風景をぼんやり見ている時の自分のフィーリングに、すごくシンクロする音楽であるように思う。そんな自分の私的なシーンとシンクロするせいなのだろうか、なんだか彼女の音楽に妙に親近感を感じてしまうのである。


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