曲紹介 (SoundCloud)

Gustave Coquiot - "Hals", "routine", "Frederick / Armand"

2014/06/06

Gustave Coquiotは河合卓人、村戸慎一、大宮麻比古からなる1986年生まれの三人組のバンドである。メンバー全員がギターヴォーカルという珍しい編成。カントリーサイケプログレなどのジャンルの要素を感じるが、それはただ単に彼らの音楽に貼られているシールなようなもので、どれも本質的にその音楽を説明するものにはなりえない。「ジャンルでは語れない」、それは多くの音楽に大なり小なり言えることであるのだが、このGustave Coquiotの音楽を形容するに当たっては、特にそこを強調したくなる。

彼らの音楽にはビターさと郷愁感と温もりがある。何だかアメリカの田舎の山奥で、焚火をしながら、思い出話などを語っているかのような雰囲気がある。そこからは、あらゆる酸いも甘いもを体験してきたような、人間的風合いを感じると同時に、何十年も人前で音楽を奏でてきて出せるような味わいも出ているように感じる。彼らはまだ20代であるはずなのだが、まるで50代のミュージシャンが奏でるような、人間としての蓄積、ミュージシャンとしての蓄積を感じさせる音楽を彼らは奏でている。ContrastはGustave Coquiotの音楽を「革製品との付き合いのようだ」と語っていたが、これは言い当て妙であると思う。まるで熟練した革職人の長年の業の集積を堪能しているかのようで、長く付き合えそうなのだ。

昨今ではジャンルに飲み込まれてしまっている音楽というのは結構多いと思う。チルウェーブシューゲイザーウィッチハウスサイケロックサイケフォーク、そうしたジャンル名だけで語れてしまう音楽というのは、案外多いように思う。別に僕は特定のジャンルを自らの音楽に中心に据えたり、諸ジャンルの要素を自らの音楽に取り込む事は全く以て否定しないし、むしろ良さそうなもの、面白そうなものはどんどん真似たり、取り込んでいけばいけば良いと思っている。しかしそれだけではなく、自分という人間の核の部分を色濃く作品に反映していってほしい、Gustave Coquiotの音楽を聴いているとそう思わせられるのである。


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