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LLLL

"Paradice"

ZOOM LENS, 2014

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LLLLは威風堂々としている。いや、前々から大きなハコに合いそうな風格を醸し出していたのだが、その風格はさらに堂々たるものになっている。彼らの刺激的で、迫力があって、爽快感のあるトラックに、それと相反するかのような、か細く、シャイで、可愛いらしいヴォーカルが乗る。そしてその音楽は、電子音楽ならではの展開技法を含むなどの実験的要素を多分に含みながらも、大変POPにまとまっている。そんな彼らの音楽の佇まいからは、大きなハコでやるにふさわしい支配性を感じる。


LLLLは東京を拠点として活動するアーティストであるようだ。BandCampのプロフィールの「hey we are here in tokyo」という記述や、Twitterのプロフィールの「A Band From Tokyo」という表記、そしてTwitterの「Ryan hemsworthさんのミックスに僕らの楽曲Youが入っています。」というツイートなどから察するに、LLLLは複数の人間からなる「バンド」であるようだ。しかし相変わらずあまりにも情報が少なく、そのメンバー構成ははっきりしない。こんな匿名性もLLLLの特徴であり、魅力の一つとなっている。


全体としては、爽快で、音にキレがあり、実験的で、威風堂々としたチルウェーブ~クラブミュージック風のトラックに、そこにか細く、透明感のあって、ハスキーな女性の歌声が入る、と言った趣だ。この女性ヴォーカルの魅力は9曲目のオリエンタルな雰囲気とテクノロジカルが入り混じった曲"Blurred”や、アルバム最後の曲"You"で特に発揮されていて、聴いてて胸がキュンとするような可愛さがある。時にそのトラックの音像の中に、彼女の歌声が消え入りそうな様は、シューゲーザー的でもある。

アルバム全体の音楽性には一定の一体感はあるものの、彼らがこれまでにリリースしたEPからの曲が沢山入っているせいか、あらゆるコンセプトの曲が入っているような印象を受ける。時には4曲目の"Beause of my eyes"のようによりトランス・テクノポップ風に行ってみたり、12曲目の"oddness"のように複雑な音処理を施し、思いっきり刺激的なトラックを作ってみたり、10曲目の"assume"のように多少歌い方をシックに変えてみたり、8曲目の"Quietely"のようにあからさまと言えるぐらいポップに行ってみたりと、様々な事がやられているような印象を受ける。その意味では様々なコンセプトの曲が集まった、曲集的なアルバムであるような印象も受ける。

個人的に好きな曲は5曲目の"Spider Web"、6曲目の"Drafting Still"、12曲目の"Oddness"、13曲目の"You"だ。自分の気に入った曲はアルバム前半よりも、アルバムの後半にある。圧巻であるのは12曲の"Oddness"から13曲目の"You"までの流れだ。チルウェーブとトランス、フリービートを基調としたトラックで、他の曲と比べてスピード感、焦燥感がある。そこにお馴染みの胸キュンものの可愛い女性ヴォーカルが入る。そして彼女の歌うサビとサビの間には、コンピューターが混乱したかのような効果音や、様々な音響処理が入り、その展開は狂気的かつ刺激的で、聴いてて注意が音楽に向きっぱなしになる。そして、その次の曲"You"は、ピッチシフターで作られたかのような、印象的かつ、胸キュンものの女性ヴォーカルのウィッスルヴォイスから始まる。そしてそれが落ち着くと、彼女のこれまた胸キュン度の高い、チルでm素朴で、しっとりしたヴォーカルが入り、癒される。ここでの彼女のヴォーカルはEmerald Fourの女性ヴォーカルの素朴さを想い起こさせるところがある。全体として楽園感に溢れていて、音楽的な面白さ、胸キュンさ、ポップネスを併せ持つ締めにふさわしい曲だ。


恐らく電子音楽に傾倒しているコアなリスナーでも、このLLLLの音楽にはシンパシーを感じるだろうし、ライトなリスナーは、彼女の音楽のポップネスはキャッチーに思えるだろう。その意味でLLLLはコアな層、ライトな層、その両方から支持されるような稀有な存在になり得ると思う。このアルバム"Paradice"は$7 USD以上払って聴く価値が十分にあるアルバムだ。是非聴くときは、スピーカーで、少し音量を上げて、彼女の生みだす迫力の音を体感してほしい。改めて、彼らのライブを大きなハコで観てみたい、そう思わせる彼らの堂々たる1stアルバムである。

Reviewer's Rating : 7.5 / 10.0

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