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BUDDY GIRL and MECHANIC

"BUDDY GIRL and MECHANIC"

BUDDY GIRL AND MECHANIC, 2013

このアルバムを聴いていると、自分がネットで音楽を掘る事に夢中だった時期の事を思い出す。 インターネットという新たな海が出現したおかげで、地球上に存在しているあらゆる音楽の探索に出かける事が可能になっていた。 そしてその海を航海して、膨大な数のアーティストの、膨大の数の音楽を聴き漁って、自分の本当に気に入ったものを見つけて購入するのが、自分のささやかな楽しみだった。 その費やした労力のせいだろうか、本当に気に入った音楽を見つけると、快楽物質が脳内に分泌され、興奮した。 それがまだあまり知られていないマイナーなものであると、得られる興奮が割り増しになった。 僕はそんな事を繰り返していた。そして、このBUDDY GIRL and MECHANICを見つけた時も、自分は当時と同じような割り増しされた興奮感を味わった。


BUDDY GIRL and MECHANICのTumblrページ によると、 BUDDY GIRL and MECHANICは2010年に結成された、日本のアンビエントロック&ポップバンドとある。 メンバーは紅一点のボーカルXiROH(Vocal)、Tetsuya.H(Guitar)、Takashi Masubuchi(Guitar)、Kenta Gunji(Drums)の四人である。 2011年の末には "ジャパン・タイムスが2012年にお薦めする5バンド" にも選ばれている。

彼女らの音楽性からは、CANやJessamineと言ったアーティストが想い起こされる。 生ドラム、マラカス、パーカッションなどで刻まれる、スローでまったりとしたビートを基調とし、 そこにブルージーなギターや、サイケなシンセがまったりとした心地の良いムードを演出し、そこにXiROHの低音の効いた、 セクシーなボーカルが入る。また各パートに緻密な処理が行われおり、それがこのアルバムに置いてとても良いアクセントとなっている。 全体として呪術的でありながらも、楽園的な心地良さを感じるアルバムである。 何かこう、宗教的な儀式か何かで、気持ちよくなってしまい、トリップしてしまうような感覚が得られる。

一番の聴きどころは四曲目の"FENIX"か。生ドラムで淡々とビート刻むビートから始まり、 その後、ムワっとしたエロいベースが入る同時に、CS80で出されるようなサイケデリックさを感じさせるシンセが入る。 そしてそこにXiROH,の低音の効いた、魅惑的で、聴く者をウットリさせるようなボーカルが入る。 そして、この曲にも各パートに緻密かつ効果的な処理が加えれる。 ボーカルやドラムにピンポンディレイがかけられることにより、空間的な変化がもたらされたり、 たまにドラムにフランジャーがかけられることにより、一時的な聴覚的な刺激を生みだしている。 パンもバンバン左右に振られていて、とても「ああ、今俺ステレオで聴いているんだな~」という実感が持てる。 そしてそれらの処理が曲の展開において、とても適切なタイミングで行われているように思えるのである。

また、最後の曲、"STAN'S SON"も真夜中のオレンジ色のライトでところどころ照らされた高速道路を、 ゆったりと車でドライブしていくような情景が思い浮かんでくる良曲である。 ほんの少し、真夜中の空に心が溶け込んでいくような感覚が得られる。僅かながら、カナダのポストロックバンド、Readymadeを想起させる曲である。


全体としては、明らかに自分好みの音楽性であるし、それぞれの楽曲の質は高いし、完成度の高いアルバムのように思うのだが、 何か終始一本調子である気がしてならない。メロディラインも似たようなものが多く、テンポ、ノリもアルバム通してあまり変わらない。 良く言えば統一性がある、安定感がある、と言えるが、否定的に言えばアルバム全体の展開に起伏の乏しさを感じるのである。

とは言うものの、BUDDY GIRL and MECHANICはこの1stアルバムで自らの持っている高いクオリティを見せる事に成功しているように思う。 今後の活動を密かに追っておきたいバンドの一つだ。

Reviewer's Rating : 7.0 / 10.0

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