曲紹介 (YouTube)

one thousand lucky cranes - "No.1"

2014/05/26

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まずドローンという音楽について少し話そうと思う。自分はドローンと呼ばれる音楽、またその要素が入っている音楽が好きな事が多い。巷ではドローンの定義が多岐に渡っているようなので、一概に言えないが、あくまで自分のドローンの定義を簡単に述べさせてもらうと、聴いていて、「どろーん」としてくるような、聴いているとソファにぐったりとうなだれたくなるような音楽の事だ。低音の効いたゆったりとした音で作られている事が多い。友人・知人からは「なんでこんな退屈な音楽が好きなの?」と言われる事があるのだけれど、この手の音楽には永遠にこの音の中に沈んでいたい、と思わせるような甘美な快楽が存在している事が多いのだ。

だけれど、「ドローンは退屈だ」という意見も解る。確かにこの手の音楽は退屈になりがちなのだ。で、そのドローンの退屈さを、その良さを保ったまま改善しようとしているアーティストというのがちらほらいて、このone thousand lucky cranesもそんなアーティストの一人になるんじゃないかと思う。同アーティストのBandcampのプロフィールによると、彼は日本の中部の山の中に住む外人であるようだ。彼のセルフタイトルアルバムが長野県の松本にあるTombo Studiosで製作されたようなので、多分その近くに住んでいるのだろう。そのアルバムに入っているこのNo.1という曲は、彼の居住地とは打って変って、都会の夜を感じさせるような曲だ。まどろむようなドローンなパッド音が空間を満たし、そこにフィルターがかった即興的なシンセ、クリックビートを中心とした様々な電子的な処理が加えられ、ゆったりと展開していく。ぼーっとしながら、この気持ちの良い音の中にいつまでも浸っていたい、そんな風に思わせる音楽である。

また、この音楽は今まで自分が他者と共有した事が無い、都会生活でのプライベートな感情、孤独感が、音楽化されているように感じるのだ。まるで写真で風景を切り取るが如く、音でその感情を切り取っているというか。その感情が共有されることでの静かなる快感と安堵感を感じる。

ちなみにジャケの写真は、新宿のスタジオアルタ 前であると推察している。