曲紹介 (YouTube)

Aimee - "синий "

2014/07/07

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梅雨なのでさらに梅雨っぽい音楽をもう一つ。 この曲"синий "(スイーニイ)は。33RECORDototoyからの33週連続リリース企画第一弾に収録されている、Aimeeによる一曲である。синий とはロシア語で青を意味するらしい。そしてこの曲からイメージされる青は少しシックで透明感のある、梅雨時の水をイメージさせる青さだ。

深くリバーブがかかった音像の中で響くチルなピアノに、幾層にも重ねられた透き通るような、少しおどろおどろしさを感じさせる女性ヴォーカルが音空間に散りばめられる。そうした作られた音空間は少しカオティックでありつつも、雨の日のPVと相まって、とても気持ちの良く、梅雨に合いそうなものに仕上がっている。世には音響派と呼ばれるミュージシャン群がいて、その名前での括り方がおかしいと感じる人はそれなりにいると思うのだけれど、多分この音響派というのは、例えばこの曲の様にメロディよりも音の響きそれ自体楽しめる音楽を作るミュージシャン群の事を指しているのだろうと思う。

あなあくやまい - "雨お通り"

2014/07/03

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最近の梅雨は梅雨らしくしとしと雨が降る、というのではなくて、スコールのように一気にザァーっと降る、という事が多い様な気がする。この事象を環境破壊、地球の温暖化と結び付けるのはいささか短絡的であろうか?自分の直感にでは、近頃の大雨を含む異常気象はそれらの事と関連しているような気がしてならない。しかし、短期的な経済発展のために自分の住んでいる地域や星を、浄化のまでに何十年、何百年、何千年、何万年単位かかるまで汚染してしまうというのは愚かな事であるな、と思う。もし地球の温暖化を進めて、南極や北極の氷が解けて、特定の地域が海の沈んだり、地球ごと汚れすぎて住めなくなってしまったら、温暖化に加担した人たちはその地域及びその星からの移住費を払ってくれるのだろうか?いずれそのような事を取りきめた国際法が制定されてもおかしくない。でも多分、大きな危機が目に見えるまでは、そのような踏み込んだ取り決めは行われないのだろう。願わくば、そのような取り決めが行われる前の段階で、科学技術の発展と地球のあらゆる生物の倫理性により、環境破壊を食い止めたいところだ。

話は大変大きく逸れたが、現在東京を拠点として活動するバンドDarjeelinの前身バンドである、あなあくやまいのこの曲、"雨お通り"からは古き良き、しとしとと降るタイプの梅雨の街の雰囲気がじんわりと滲み出ている。その叙情的な雰囲気から70年代の日本のサイケ・ロックバンドBrushThe BeatlesのLucy In The Sky With Diamondsという曲を想い起こす。あなあくやまいのメンバーは大久保(vo,gu)、吉田(vo,ba)、新里(vo,gu)、中野(dr)の四人で、このメンバーから新里が抜けて、三人組体制となったバンドが、今のDarjeelinだそうな。現在はそのDarjeelinとしてアルバムを制作中らしい。

Salon Music - "It's A Little Thing"

2014/06/27

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Salon Musicは1980年というニュー・ウェイブ全盛期の時期から活動する日本のニュー・ウェイブユニットであるようだ。メンバーは吉田仁と竹中仁見の二人。これまでに13枚のオリジナルアルバムや各レコード会社の編集盤と、15枚のコンピレーションアルバムに参加している。2003年最後にベスト盤を最後に、リリースが途切れていたが、2011年にFelicityからの"Sleepless Sheep"のリリースで復活をしている。そのリリースページの紹介文には「充実した短編集の読後感のような、若しくはゆったりと流れるロードムービーを観終えたような心地良さがあります」とあり、そそられる。この曲"It's A Little Thing"はその"Sleepless Sheep"からの一曲。

圧迫感のあるキックの音、少ない音数で同じフレーズを反復させながら曲を展開させていく感じからミニマル・テクノの影響を感じさせ、そして女性ヴォーカルを中心としたロンドン風味のお洒落な佇まい、イギリス風味の少し捻くれのあるメロディからはSaint Etienneを想起させるところがある。

石橋英子 - "塩を舐める / car and freezer"

2014/06/25

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石橋英子の公式サイトによると、彼女は千葉県茂原市出身の音楽家であるようだ。幾つかのバンドで活動後、映画音楽の制作をきっかけとして数年前よりソロとしての作品を作り始めたらしい。彼女はピアノを中心としつつも、ドラム、フルート、ヴィヴラフォンなど多様な楽器を扱えるマルチ・プレーヤーであるそうな。扱える楽器も多様であるならば、その肩書きもシンガー・ソングライター、セッション・プレイヤー、プロデューサーと多様で、それらの肩書で、かなりフィールドレスに漂いながら活動している。最近では長谷川健一前野健太トンチオウガ・ユー・アスホールの作品に参加。またソロ・ライブと共に「石橋英子withもう死んだ人たち」というバンドでも活発にライブをしていて、そのメンバーには、あのジム・オルークも名を連ねる。

この音源は彼女の今年3月に出したジム・オルークがプロデュース、ミックス、録音まで担当する日本詞盤と英詞盤の二枚組アルバムの『car and freezer』のDisc 1(side car )の"塩を舐める"と、Disc 2(side freezer)の"car and freezer"を繋げたものであるらしい。ちょうど動画の2:32秒の画像が切り替わるところで、日本語詞ヴァージョンから英語ヴァージョンにクロスフェードしている。このアルバムのコンセプトは大変面白く、全く同じ曲の中で、日本語と英語でそれぞれ別の内容の歌詞で歌っているらしい。なるほど、これなら日本にも海外にも販路を広げられるし、両言語を聞き取れるリスナーは一つの曲を二つの歌詞で楽しめるし、作る時のマンネリ化も軽減できるってわけだ。考えたな。

ジャズやシティポップの要素をふんだんに取り入れ、転調を効果的に使ってメロディに変化をもたらし、抑揚を使って聴く者にインパクトをもたらしている。そんな音の中に入る彼女のヴォーカルはか細く、透明感があり、まるで鳥が囀るかのようだ、そのサウンドイメージはどことなく、荒井由実を想起させ、この抑揚をを大事にする様、転調・移調の上手さから は、ツチヤニボンドにベースとして参加している渡部牧人のソロ・プロジェクト、PADOKを強く想起させる。他の動画もYouTubeにて拝見させて頂いたが、タップダンスとピアノの編成で即興的な演奏を繰り広げていたり、男女デュエットのポップスをやっていたりと、音楽性の幅の広さを感じさせる。

藤本一馬 - "My Native Land Ⅱ"

2014/06/23

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藤本一馬はOrange Pekoeのメンバーでもある、ギタリスト/作曲家である。フォーク、ブルースギタリストの父親の影響でギターを弾き始め、叔父の影響でジャズに傾倒。その後、ブラジルなど南米の音楽をはじめ、様々なワールドミュージックの影響を受けている。以前自分はOrange Pekoeが出演しているインターネットラジオを良く聴いていたのだが、一体この人はいくつネタがあるのだろう、と思うぐらいジャズを中心としたワールドミュージックに精通していた覚えがある。

これまでのリリースには、2011年のギタートリオ編成で録音された1stソロ・アルバム『Sun Dance』、2012年のアルゼンチンより Carlos Aguirre (pf, vo)、ブラジル・ミナスからはRenatoMotha&Patricia Lobato (vo)、そしてバンドネオン奏者の北村聡などを迎えた、2ndソロアルバムの『Dialogues』がある。そして今年2014年7月には、岡部 洋一(per)、沢田 穣治(Choro Club/b)、工藤 精(b)とのギタートリオを軸 に 、金子 飛鳥( Violin)、佐藤 芳明 (accordion)、現代ブラジル最高峰のピアノ奏者とされるアンドレ・ メマーリらを迎えた、3rdアルバム『My Native Land』をリリース予定だ。

彼のギターや全体の音楽を聴いていると、ブラジルの音楽家、エグベルト・ジスモンチを強く想起させる。ラテンの国の海辺やウユニ塩湖が思い浮かぶような、ロマンティシズム、心地良さ、涼しさがある。聴いているとメンバーが皆とても心地良さげに弾いているな、との印象を受ける。演奏の様々な箇所で小さな化学反応が起こっていて、それが波のようなうねりを生んでいる。特にこのピアノのギターのコールアンドレスポンスユニゾンを含めたコンビネーションが鮮やかであると思う。昔聴いた彼の1stアルバムに収録されている「Sun Dance」という曲は奔放さと情熱を前面に押し出した曲だったが、それに比べるとこの3rdアルバムに収録される予定の「My Native Land Ⅱ」はより静けさと心地良さを感じさせる。

Kumisolo - "Robot Copy Woman", "Kabuki Femme Fatale", "Jungle Lady"

2014/06/16

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この動画は、先日紹介した在仏日本人のシンガーソングライターであるKumisoloと、日本の美容界のパイオニアとして知られるメイクアップアーティスト、植村秀によって創業したブランドであるshu uemuraとのコラボレーションであるらしい。このshu uemuraというブランドの提案するメイクアップはとてもユニークで、"人"というキャンパスに、自由な発想でメイクアップを描くようなメイクアップを提案している。要するにメイクアップに芸術の要素を取り込もうとしているのだ。そしてshu uemuraそれを可能にするバラエティ豊かな色彩と質感の商品を取り揃えているとのこと。他にも 「欠点を隠すのではなく、長所を生かして、ひとりひとりの美しい個性を引き出す」「自然、科学、アートの融合」などを掲げていて、数ある美容メーカーの中において異彩を放っている。

動画は三つあって、この"Robot Copy Woman"の他にも、"Kabuki Femme Fatale"、"Jungle Lady"がある。それぞれの動画がそれぞれのメイクアップの仕方をレクチャーしている。それがこのKumisoloのフランスナイズドされたユーモア、独特な響きのする日本語、特徴的な顔と相まって、shu uemuraのコンセプトを明確かつエスプリに伝えている。

Nag Ar Juna - "doqu"

2014/06/11

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久しぶりにその美しさで体に鳥肌が立つような曲に出会った気がする。この曲からは神々しささえも感じられるが、それは決して取ってつけたような神々しさではなく、内側から溢れ出てきて、それが自分に降り注ぐような神々しさである。何かこう身近にある、リアリティのある神々しさというか。このメロディや曲の展開の仕方、音の入れ方は、J-Popの良い部分が詰まっている気がするな、と思ったらあのカジ・ヒデキのサウンドプロデュースを手掛けていた橋本竜樹という方のインディ・バンド・プロジェクトであるらしい。彼は他にもHAHVAHDのサウンドプロデュースを手掛けているようだ。とりあえず両方のアーティストの音源をYouTubeで聴いてみたけれども、両方ともとってもポップで、この美しい曲を作る下地のようなものが感じられる。

しかし、カジ・ヒデキやHAHVAHDがより大衆に向けたようなポップネスを持っているのに対し、この"dogu"という曲はもっとプライベートな曲のように感じる。 彼らのデビュー・アルバムである"How Many Friends Can Die Happily?"のCDリリース時のインタビューでは、「最初は誰にも向けずに作る、というテーマだったんです。」とも答えている。このインディ・バンド・プロジェクト自体、よりプライベートな音楽を作りたいというベクトルでやっているのかもしれない。

この"doqu"という曲は、2014年6月20日に、先日紹介した"SHE TALKS SILENCE"も音源をリリースしているDE.TE.RI.O.RA.TIONからリリース予定の"DOQU"(12 ")に収録されている。同音源の録音には、現在のライヴ・メンバーである須田洋次郎(ミツメ)、PunPun(New House)、YUJI ANDO(golf)、Jun(80kidz)が参加している。ちなみにこのMVはSHE TALKS SILENCEが監督している。

Convex Level - "Traffic"

2014/06/09

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Convex LevelのメンバーはMK(Bass / Vocal)、Nakamichi(Drums)、RW(Guitar / Vocal)の三人。活動歴は既に25年を超えていて、メンバーはずっと固定であるようだ。メンバーは3人とも45歳を超えていて、世間的にはオッサンと呼ばれる年齢であるのだが、 その年齢にしてはかなり若さナウさを感じさせるサウンドを生み出している。逆に、この何か抗っている感じ、ハミ出ようとしている感じ、「一筋縄じゃ終わらせんよ」と思ってそうな感じからは、自分よりも一回り、二回り上の世代のロックの愛好家であるな、との印象も受ける。僕の世代だと、ロックは時代の代弁者的な要素が強かったのだけれど、それより上の世代にロックについて語らせると、斬新性であったり、実験精神であったり、何かに対する抗う態度などを強調する事が多い。多分彼らもそういう類の方達なのだろうな、と推察している。

彼らの出す音は硬質で、コンクリートや金属物に感じるような冷やかさを感じるのだけれど、この曲の作りはとてもポップだし、このいい感じに脱力ヴォーカルもポップさを醸し出している。しかしこの曲、ポップはポップなんだけれど、初めての人にとっては、次の展開の予想が難しいという尖った側面もある。例えば同じフレーズが延々と続いたかと思えば、いきなりフワッと広がりのある曲調に変わったりするし、偶数拍を基調としたリズムの中で、唐突に奇数拍になったりするので、普通にノってるとつんのめったりする。このような一筋縄ではいかない曲展開からはZAZEN BOYSを想い起す。そしてこのPVは都会におけるトラフィックというものを抽象化したような感じだ。

この"Traffic"という曲は彼らのCL5というアルバムに収録されている。また、ototoyからは高音質バージョンがリリースされている。少し同サイトで同アルバムの試聴をするだけでも、イカした曲が並んでいるな、という印象を受ける。