曲紹介 (YouTube)

左右 - "なくならない"

2015/04/26

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左右の公式サイトによると、左右は花池洋輝((Vo.Ba.Dr)、桑原美穂(Vo.Gt)による2ピースバンドであるようだ。2010年、花池が中学時代に入手し、すぐに弾かなくなったギターを物置で見つけ、楽器未経験の桑原に渡すことにより結成したらしい。これまでのアルバムリリースには本曲を含む11曲の入りのアルバム、「スカムレフト スカムライト」があり、「Headache sounds SAMPLER CD volume FIVE」という、PANIC SMILEを初めとするアーティストが参加しているコンピレーションにも参加している。彼らの公式サイトの略歴は結構読んでいて面白く、「イギリスの新聞『The Guardian』にて楽曲のレビューが掲載され、英語で『左右のライブ中、観客はとても気まずい思いをしている』と書かれる」、「ライブを見に来た大手レコード会社のスタッフからCMオーディションに誘われる。楽曲を送ったところ『華がない』という理由で落選し、小学5年生のガールズダンスグループがグランプリを受賞する」などの自虐的な内容を含んだ、面白エピソードで満載だ。

左右は明らかにひょうきんで、くだけたバンドだ。Ian Martin率いるニューウェーブバンドのTrinitronに所属するZanaが定義する所の高円寺スタイル、「不格好で、不安定になる」を踏襲していると思う。花池がベースを弾きながら、足でドラムのキックを入れ、ハイハットを刻み、桑原はギターヴォーカルと間抜けな音を出す笛のような楽器を担当する。「何回噛んだところで味はなくならない」というフレーズを繰り返し、「そうだよな、何回噛んだところで味はなくならないよな」とこちらに思わせつつ、夜な夜な行われる意味無さげな味比べのエピソード、そこから男に振られたエピソードを、ヤケになったノリでラップする。明らかに馬鹿げた、くだけたバンドであるのだが、ヤケクソに自己開示しきる姿には、カッコ良さを感じる。

Young Juvenile Youth - "Animation"

2015/04/18

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エレクトロニカ方面のリリースの多い音楽レーベルPhaseworksによると、Young Juvenile Youthはエレクトロニカ方面にて、アブストラクトで繊細なビートを作り出してきているJemapurと、ヴォーカリストであるYukiのプロジェクトであるらしい。今年4月27日にiTunesにて"Animation"という六曲入りの音源をBeat Recordsからリリース予定で、6月3日にはCDのフォーマットでもリリースする予定だ。この曲"Animation"はその音源のタイトルトラックだ。

スッキリとした音数の少ないトラックの上で、気だるさのある女性ヴォーカルが歌う様は、COET COCOEHを想起させる。しかしその音像はよりアブストラクトで、その女性ヴォーカルはよりフラットだ。その音楽の源流にはPortishead砂原良徳の気配がある。そして映像ディレクターであるKosai Sekineを中心に作られたMVは洗練された美しさがありながらも、奇妙で気持ち悪い。口紅を少し横にずらして塗って、まるで不二家のペコちゃんのようになっている女性が歌い始め、女性の顔が物切りにされたり、グニャグニャになったり、コーラスが入るとほっぺに口や目が現れたり、頭が氷山のようになったり、まつ毛が30cmぐらい伸びたり、やりだい放題だ。

LLLL - "Blue"

2015/03/22

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短期間で同じアーティストを二回取り上げるのは気が引ける。ただ僕の手は彼らのこの新曲に関して、タイピングを進めたがっていて、僕はそれに抗う事が出来なかった。

LLLLの曲を聴いていると、夏が始まる前の、あの解放感と高揚感を思い出す事が多い。この曲も例外ではない。最近の僕は完全にインドア派で、休日でも閉め切った部屋で過ごしているような地底人の生活をしているのだが、彼らのこの爽快な曲を聴くと、太陽の下に出て、海に出かけたくなる。トランシーなトラックは気持ち良さと爽快感に溢れていて、その上、お馴染みのか細い胸キュン女性ヴォーカルが乗る。そして、この曲が始まって一分間経過したあたりから始まるこのサビの高揚感と浮遊感と言ったら!世界中で聴かれそうな2010年代のポップミュージックの名曲ではないかと思う。フジロックの様な空気の美味い大きなハコで体感したい一曲だ。俄然、最新作の2ndアルバム"Faithful"の出来が気になってきた。

jealousguy - "yenya"

2015/03/21

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ドープなビートミュージック、ヒップホップ、電子音楽を中心にリリースしている音楽レーベル、Lo-Vibesによると、jealousguy (ジェラスガイ) は、高橋雅美のソロ・プロジェクトである。ピアノコラージュ、シンセ、レコードサンプリングを駆使し、PADを使用したリアルタイムでの演奏を主体としながら、ラップトップで音楽を制作しているそうな。現在は北海道のニセコで自然と触れ合いながら、独自のサウンドクリエイトに明け暮れるらしい。2015年には、Lo-Vibesからこの曲、"yenya"が含まれている"OVERSHADOWED"をリリースしている。

太いシンセベースと、圧迫感のある古めの打ち込みのドラムの音使ったビートを主体としていて、そこにどこからかサンプリングしてきたような質感のある女性ヴォーカルが入ったり、様々なズレ、フィルイン、ファニーなシンセや効果音が入ったりで、曲が展開していく。デジタルな音にアナログ感や人間味を加えたようなビートミュージックだ。

また、Daisuke Ukisitaの担当するMVの映像は、何というかこう、奇妙で、物体的である。右には電気を迸らせる装置の中に耳が浮いていて、左奥では赤く光るマニキュアの入れ物らしき物体の蓋が回っている。そして女性ヴォーカルが入ると同時に、中央の空中に高橋雅美本人と思われる人物がPADを使って演奏している姿がプロジェクターによって移し出される。それが音楽と相まって、謎の可愛いさを醸し出している。

YPY - "A Day in the Lizard Life"

2015/03/15

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YPYはgoatbonanzasのメンバーであり、カセットテープレーベル"birdFriend"主宰日野浩志郎によるソロユニットであるようだ。これまでに"LTFT Syndrome"を始めとする、3枚の音源をリリースしている。彼が所属しているバンド、goatはバンド編成でミニマルな音楽をやっていて、bonanzasの方は硬質で、鋭角で、電子的、サイケで、無国籍的な音楽をやっている。特にヴォーカルは面白く、色々な国の言葉を入り混じったような謎の言語を操っている。一回ライブを見たのだが、その演奏のキレと変態性に度肝を抜かれたものだ。

YPYはヴェイパーウェーブを踏襲した様な、サイケで、地下室的音楽をやっている。その音楽からは常に濃い液体のようなものが感じられ、何かビートによってフツフツ煮詰められているような印象を受ける。途中からまるで全く別の曲が挿入されるような大胆さ、破壊性も兼ね備える。

Jesse Ruins - "L for App"

2015/03/07

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これを聴いてJesse Ruinsはとても質の高いアーティストであるな、と思った。まずこの音質。この音にはまるでヴィデオテープを通したような濃厚で温かみのある味わいがある。昨日食べたラーメンの濃厚なスープのようだ。最もこちらは聴いてて胃に持たれる様な事は無い。次に、一つ一つの音が丁寧に作られている。良くないな、という音が一流のテクノ・アーティストの様に聴き当たらない。キック、ハイハット、ヴォーカル、指のスナップ、スネアのリムショット、ベース、何を取っても、だ。これも昨日食べたラーメンの一つ一つこだわり抜いた具材群のようだ。そして最後に、その音楽性の幅の広さだ。確かこの前はシューゲーザー、ポストパンク、80~90年代のイギリスのマンチェスターのバンド的な要素に、J-popのポップネスを足した様な音楽をやっていたはずなのだが、今回はがらりと変わって、ダブステップの影響を強く感じさせる、怪しくてダウナーな音楽を作って来ている。色々聴いてるのだな、と思う。この曲は去年の冬に発売された2nd Album"Heartless"に収録されている。

Cuushe - "Tie"

2015/03/01

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最近、すごく空虚な気分になる事が多い。今日も例外ではない。人間の利己性、権威主義性、名誉と地位の儚さ、新しいものへの排他性、弱きものへの虐待性、自分がいなくても世界が回る事、成立要因さえ揃えば最低な事が起き続ける事、愚行を延々と繰り返す人の愚かさと、その愚かさを認知すら出来ない人の認知の限界性、などに気付く事が多かったりで。しかも今日は寒くて、雨で、明日は月曜日だ。こういう日は家に籠りたくなる。Cuusheのこの曲"Tie"はそんな自分の手助けをしてくれそうだ。

Cuusheは京都出身のアーティストで、これまでに"Red Rocket Telepathy"(2009)、"Butterfly Case"(2013)、二枚のアルバムをリリースしている。この曲"tie"は七曲入りの最新EPの"Night Lines"からの一曲。

Cuusheの一つ前のアルバム"Butterfly Case"は、チルウェービーな音の霧の中に寂寥感のあるヴォーカルが見え隠れするような音楽だったが、この曲"Tie"では、その霧は晴れていて、音に透明感と洗練性を感じる。ただし"Butterfly Case"で見られたような、どこまでも落ちていくようなノリは継承されているようだ。そんな曲と共に流される、愛らしく幻想的な動物のイラストが万華鏡のように回る映像には、サイケデリック、ミニマリズム、ダウナーさが同居している。昔YouTubeにあったSlowdiveのRuttiという透明感のあってダウナーな曲と共に、10分間乾燥機が回っているだけ映像のノリと似た様なモノを感じる。

LLLL - "Only To Silence ft. Metoronori"

2015/02/28

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サッカーには点を取り出すと止まらなくなる選手っているけれど、LLLLのこの曲、 "Only To Silence ft. Metoronori"を聴いて、それは音楽の世界にも往々にしてある事であるな、と思った。今の彼らはノッている感じがある。クラブミュージックとチルウェーブが融合した堂々の1stアルバム"Paradice"をリリースした後、LLLL,はさらに自分の音世界を色濃いものとして独自の世界観を切り開きつつあり、そしてそれは壮大なものとなっている。

@darwinfish105の手掛ける映像と共に想起されるのは、テクノロジカルな近未来都市である。自分は近年、東京というものを表現対象にする気が失せてきっていたのだれど、ああ、こういう切り口もあるよな、と気付かされる。人を不安にさせるような不安定の音、近未来都市の風をイメージさせるアルぺジエイターのかけられたシンセから始まり、そこから一分半続くイントロは聴いている自分の気分を盛り上げる。Aメロに入るとふと静寂が入り、それがあのか細くて愛らしい女性ヴォーカルが際立たせる。サビになるとベースとトランシーなシンセが堂々と出て世界が広がり、最後はヴォーカルのトーンが高くなり、さらに世界が広がっていく。LLLLの視点はどんどんマクロになっていっている印象だ。これを見ると2nd アルバム"Faithful"もかなり期待が出来そうだ。