曲紹介 (YouTube)

MIRROR MOVES - "The Lullaby for Waking Up"

2014/10/11

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最近、自分はストレートなロックを聴く機会が減っている。なぜだかは解らない。情報革命の影響により、ロックが昔のような支配的なジャンルではなくなり、他のジャンルに人材が流れているのかもしれないし、ロック自体に様々な変化球が生まれて、そこに人材が流れ、ストレートなロックをやる人が減っているのかもしれないし、ただ単に自分がロックをそんなに聴かなくなったからかもしれない。そんな中においてMIRROR MOVESのような単純にカッコいいストレートなロックバンドはレアで、貴重な存在のように思えている。

MIRROR MOVESの公式ページによると、彼らは2011年に結成された東京のロックバンドであるらしい。メンバーはMasahiro Oketa (Gt,Vo)、Yuusuke Imoto (Gt)、Kazuki Tsunami (Ba)、Ryo Fushimi (Dr)の四人。これまでに四曲入りのCD-R 、"THE FIRST REPORT OF MIRROR MOVES" (2012) と、二曲入りの音源"VOLCANO" (2014) をリリースしている。この曲「The Lullaby for Waking Up」は前者の音源からの一曲。

太くてコクのある音のディストーション・ギターが痛快で挑発的なノリを生みだし、リズムユニットが推進力とスピード感が与え、そこで中々ドスの効いた男性ヴォーカルが吐き捨てるよう歌う。ビデオを見ながらだと、退屈性に対する反抗心のようなものも感じられる。気温が低くなってから聴くこの様なロックは、良い感じに体を温めるので好きだ。

wk[es] - "I/F"

2014/10/06

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電子音楽に対する批評として、「無機質」「人間らしさがない」などの批評はメジャーだ。それらの批評は往々にして否定的な意味である事が多いし、事実自分もそのような意味で批評する事は多い。しかし、そういった音楽もある一定の質を越えると、それらの批評は否定的な意味でなくなり、ただ対象となる音楽の個性を描写したものになる。wk[es] の I/Fもそう思わせるような音楽を作っている。

Hz-recordsの同アーティストのプロフィールページによると、1998年からギタリストとして活動を開始し、都内を中心にバンドメンバーとしてキャリアを積んでいたそうな。2008年よりwk[es] (ダブリュー・ケー・エス)名義で活動をスタートさせる。そして2010年にはPakcheeと共に電子音楽レーベルHz-recordsを設立。同レーベルのコンセプトは「踊れる電子音響」。 wk[es]はそのコンセプトを軸に、「エレクトロニカ、ノイズ、グリッチ、IDM、エクスペリメンタルなどの電子音楽を消化したコンピュータでしか成し得ない人工的な周波数デザインを使用した先端ダンスミュージック」を作っているそうな。既に海外からも高い評価を得ていて、イタリアのデザイン家具メーカーVALCUCINE”Milano Design Week 2012” のプロモーションビデオにも楽曲を提供している。この曲I/Fは彼のアルバム、interfaceからの一曲。

一つ一つの音のクオリティの高さが、この無機質性に説得力を持たせているように思う。圧迫感のあるキックの音、散りばめられた多種多様なノイズと信号音が、ビートを生みだし、そのビートに呼応するように、映像の中央にある抽象的な物体がその形状を変化させる。最後までに聴いていると、非音楽的な音楽でありならがも、曲構成はちゃんと音楽的に練られているな、という印象を持つ。

藤本一馬,伊藤志宏 - "Wavenir"

2014/09/22

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Orange Pekoeのギタリスト、作曲、編曲を担当している藤本一馬と、ドラムレス、ベースレスの変則形態に定評のあるピアニスト、伊藤志宏がタッグを組んで、今年9月4日に「Wavenir」(新しい波形の未来。) をハンモックレーベルからリリースした。

もはや世界のジャズ界のトップアーティストと肩を並べているのではないかと思う。藤本一馬の奏でるエグベルト・ジスモンチを想起させるような、奔放で、煌びやかで、郷愁感のあるアコースティックギター、伊藤 志宏の水やクリスタルといったものを想起させるような、柔らかで、耽美的なピアノ。そんな一流同士のアンサンブルによって生み出される音楽は、まるで水のように形が無い。リズムは有機的に変化するし、抑揚も自由自在、メロディはまるで次から次へと溢れ出てくるようだ。「これぞ音楽」と言いたくなるような出来映え。DAWのグリッドラインに沿って作られた音楽、過剰な音圧競争の渦中にある音楽では味わえない良さがある。

Jemapur - "Beneath The Water Surface"

2014/09/01

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Jemapurは1986年生まれ、静岡県在住のToshiaki Ooi のプロジェクトであるようだ。どうやらクラシック音楽に熱心な家庭で育ったらしい。自らもピアノに打ち込む傍ら、King CrimsonAphex Twinの影響を受け、中学生の時から電子音楽の制作を始めたそうな。これまでに5枚のアルバムを出していて、この作品は2008年にリリースされた2ndアルバム、Evacuationというアルバムに付属しているDVDに収録されているようだ。このビデオに関しては、大変沢山の方が携わっているようで、クレジットはこちらに書かれている。

この動画を見ていると、魚が飼育されている水槽の中を見ている時の気分になり、ついつい惹き込まれてしまう。外からくたくたになって帰ってきて、こういう動画を視聴すると、体内が洗われた気分になり、癒される。音楽は一つ一つの音が繊細に作られ、それらの音が水の中を揺らぐようなパッド(間延びした音)に緻密に散りばめられ、ミックスされる事によって、完成度の高いビートミュージックに仕上がっている。また、この動画はVladislav Delayに代表されるような、一昔欧州で流行っていたようなアブストラクトなビートミュージックと映像が融合した作品の影響を受けているように感じられる。最近視聴した作品の中では、 ロンドンでクリエイティブ・ディレクター、グラフィックデザイナーとして働いているMarkos R. Kayの作品群が想い浮かぶ。

一十三十一 - "時を止めて恋が踊る"

2014/08/29

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秋が間近に迫った段階で、僕は 一十三十一の2014年夏のシングルの連続リリース企画の事を知った。例え規模がどれだけ小さくても、音楽情報サイトを運営している自分としては、夏に合いそうな良曲を、秋が間近に迫ったタイミングで見つける気分はあまり良いものじゃない。しかしその連続リリース企画の第三弾は、夏の終わりっぽい雰囲気が出ているので、見つける段階としてはギリギリセーフだったのかもしれない。

このシングル「時を止めて恋が踊る」は 「硝子のサマーホリデー」 「夏光線、キラッ。」に続く夏のシングルリリース企画第三弾で、itunes限定で配信されているらしい。相変わらず80年代~90年代の シティポップを思い起こさせるぐらいアーバンであるが、まるでSeihoを思い起こさせるぐらいに、トラックが近未来的で、音がパッキパキと鳴っている。その様は2010年代版シティポップと形容するにふさわしい出来だ。もし彼女が80年代、90年代に世に出ていたら、ミリオンセラーとか飛ばしていたのだろうな、と彼女のクオリティの高い楽曲群を聴いていて思う。

OLAibi - "seed feat. 加瀬亮, 高木正勝"

2014/08/22

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音楽性としてはミニマルミュージックをベースとした電子ポップという印象だ。反復的にフレーズを奏でるピアノを基調とし、そこにずっと英語で何かを呟く男性ヴォーカルが入る。そして曲が進むに従って、子供の声、ビート、水の音、女性ヴォーカル、シンセや音響処理によって生み出された効果音が挿入されていき、それによって曲が盛り上げられていく。視聴していると映像と相まって、森の中の泉に仰向けになって、漂って、項垂れているようで、気持ち良い。

OLAibiOOIOOのドラマー、パーカッショニストとして活動している人物らしい。OLAibiとしては三枚のアルバムを出している。OOIOOとしては、現在までに4枚のアルバムをリリースしている。OOIOO以外の活動も活発で、ピアニストで映像作家の高木正勝との制作、UAの作品参加、大友良英との共演等、精力的に行っている。この曲、「seed feat. 加瀬亮, 高木正勝」は2012年にリリースされたOLAibiの"new rain"に収録されている。DirectorはSHOJI GOTO

Kidkanevil - "Inakunaru"

2014/08/15

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僕は初音ミクというヴォーカロイドがニコニコ動画界隈で流行っているのを知っている。今まで、初音ミクに対しては、一部のアニメオタクが使うような代物であり、自分の聴いているような音楽とはかけ離れた所で使われているものである、とのイメージがあったのだけれど、最近色んなものを聴いて、考え方が変わりつつあって、昔より初音ミク及びヴォーカロイドに肯定的な印象を持ちつつある。今では例え初音ミクでなくとも、ヴォーカロイドというものを僕も使ってみたい、とまで思っている。まあ、自分の場合は声ネタがあまりにも不足しているというのも理由だが。

この曲は所謂「音響派」のエレクトロニカをベースとした、初音ミクらしきヴォーカロイドの歌モノである。まるで感情を持ち始め、そしてその感情に名前をつけ始めたロボットが、自分の心情を吐露し始めたような感覚がある。でもそこには、決して人間にはなれない悲しさのようなものを内包されているように感じる。

この曲" Inakunaru "はKidkanevilというイギリス出身のプロデューサーと、Phasmaという横浜在住のエレクトロニカアーティストがコラボしたものだ。この曲は2014年4月30日にflauProject Mooncircleから共同リリースされたKidkanevilの「My Little Ghost」に収録されている。

mabanua - "talkin' to you"

2014/08/08

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mabanuaの公式ページによると、mabanuaはドラマー、ビートメーカー、シンガーを兼ねる日本のクリエイターであるようだ。HIPHOPのフィルターを通しながらも、ジャンルに捉われない音作りが特徴であるらしい。これまでのアルバムリリースには2008年の「done already」、「only the facts」の二枚がある。また、Shingo Suzuki関口シンゴ と共にバンドOvall (オーバル) としても活動していて、2枚のアルバム、2枚のミニ・アルバムを出している。この曲"talkin to you"は、彼の2ndアルバム「only the facts 」のリードトラックである。

ループされるビートと上物の上に、まどろみのある緩くて気持ちの良いギターと、喉ごし爽やかなキュートな男性ヴォーカルが載る。この気持ちの良い、喉ごしの爽やかなヴォーカルは、Neon Indianの「Psychic Chasm」のそれを思い起こさせる。そろそろこのようなタイプのヴォーカルに名前を付けて、体系化してもいいような気がする。この曲はポップソングとしてのキャッチーさは抜き出てるものがあり、こりゃ人気出るな、って思う。